何のために飛ぶのか。
中1の国語の教科書に載っていた『空中ブランコ乗りのキキ』を読んだ。たった一回の四回宙返りに、命をかけた空中ブランコ乗りの話だ。
読み終えて、ふと羽生結弦選手のことを思い浮かべた。羽生結弦選手も北京五輪で前代未踏の四回転半に臨もうとしている。
二度オリンピックで金メダルを取っている27歳の羽生結弦選手にとって、四回転半を成功させることが現役を続けるモチベーションになっているのだろう。
「死んじゃうんではないか」と本人がインタビューで答えるくらい死ぬ気で四回転半に挑んでいる。
そんな姿がキキの姿と重なる。
キキしか飛べなかった三回転を、ライバルの空中ブランコ乗りのピピが成功させた日、キキはある決断をする。
どうして命を掛けてまで?と思う反面、大きな拍手をもらった者だけが分かる境地があるのかもしれない。
『空中ブランコ乗りのキキ』の中で、私が好きな言葉がある。キキの同僚であり友達のピエロの言葉だ。
キキを想う気持ちと共に、ピエロとしての生き方や幸せが滲む。
私はこちらの敗者的な強かさを感じる言葉にじーんとする。
そして、ついに空中ブランコのシーン。
ブランコ乗りのキキはおばあさんから貰った薬を飲み、四回宙返りを成功させた。
客は拍手喝采、互いに涙を流し肩を叩き合ったが、その時、キキの姿はもうどこにも無く、それに気付く者はいなかった。
美しくも淋しげなラストに「幸せって何だろう」と思わずにはいられない。
キキの最後の言葉。
たった一度。最高の一瞬のために全てを捧げる人がいる。
それがすごく綺麗で、文章とイラストに描きたかったので、満足している。
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