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何のために飛ぶのか。

中1の国語の教科書に載っていた『空中ブランコ乗りのキキ』を読んだ。たった一回の四回宙返りに、命をかけた空中ブランコ乗りの話だ。


読み終えて、ふと羽生結弦選手のことを思い浮かべた。羽生結弦選手も北京五輪で前代未踏の四回転半に臨もうとしている。

二度オリンピックで金メダルを取っている27歳の羽生結弦選手にとって、四回転半を成功させることが現役を続けるモチベーションになっているのだろう。

テレビ放送中、振付師に調子を聞かれて「身体はボロボロ」とズボンを捲り上げて膝を見せる。
「誰も跳んだことないんですよ。誰もできる気がしないって言っているんですよ。それをできるようにするまでの過程って、ホントにひたすら暗闇を歩いているだけなんです。だから毎回、頭打って脳震とうで倒れて死んじゃうんではないかって思いながら練習はしていました」
《東京スポーツ》

「死んじゃうんではないか」と本人がインタビューで答えるくらい死ぬ気で四回転半に挑んでいる。

そんな姿がキキの姿と重なる。
キキしか飛べなかった三回転を、ライバルの空中ブランコ乗りのピピが成功させた日、キキはある決断をする。

「おやすみなさい。おばあさん。」

「お待ち。」

キキは立ち止まりました。

「おまえさんは明日の晩、四回宙返りをやるつもりだね。」

「ええそうです。」

「死ぬよ。」

「いいんです。死んでも。」

「おまえさんは、お客さんから大きな拍手をもらいたいという、ただそれだけのために死ぬのかね。」

「そうです。」
キキの決意に、不思議なおばあさんは「一度だけ四回宙返りができる」という薬を手渡す。

どうして命を掛けてまで?と思う反面、大きな拍手をもらった者だけが分かる境地があるのかもしれない。

2014年グランプリファイナルでの優勝。観客の喝采を全身で受け止める羽生選手。


『空中ブランコ乗りのキキ』の中で、私が好きな言葉がある。キキの同僚であり友達のピエロの言葉だ。

ピエロ「四回宙返りなんて無理さ。人間にできる事じゃないよ。」

キキ「でも、誰かが三回宙返りを始めたら、私の人気は落ちてしまうよ。」

ピエロ「いいじゃないか。人気なんて落ちたって死にやしない。ブランコから落ちたら死ぬんだよ。いっそ、ピエロにおなり。ピエロなら、どこからも落ちやしない。」

キキを想う気持ちと共に、ピエロとしての生き方や幸せが滲む。
私はこちらの敗者的な強かさを感じる言葉にじーんとする。


そして、ついに空中ブランコのシーン。

ブランコ乗りのキキはおばあさんから貰った薬を飲み、四回宙返りを成功させた。
客は拍手喝采、互いに涙を流し肩を叩き合ったが、その時、キキの姿はもうどこにも無く、それに気付く者はいなかった。

美しくも淋しげなラストに「幸せって何だろう」と思わずにはいられない。

キキの最後の言葉。

「見ててください。四回宙返りは、この一回しかできないのです。」

たった一度。最高の一瞬のために全てを捧げる人がいる。

それがすごく綺麗で、文章とイラストに描きたかったので、満足している。





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#羽生結弦 #フィギュアスケート #北京五輪 #オリンピック #4回転半 #空中ブランコ乗りのキキ

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TOMO
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