無は存在するのか、しないのか?——現代4コマ難題「透過問題」の本質【 #現代4コマ 】
現代4コマとは。
端的にいうと「漫画の形式に捉われない4コマ」だという。
(現代四駒辞典を参照)。
では、4コマとは何なのか……?何をもって「コマ」とする……?
はしがき
現代4コマという潮流があります。これは、4コマ漫画などといって当然のように用いている4コマという概念を問い直し、様々な視点から再定義する試みです。以下のページとか、Twitterの公募アカウントなど見ると空気感がつかめます。
4コマという完成されたひながたの本質を探り、「4コマ」と「4コマではない」の境界を攻めるわけです。なお、運動のかなり早い段階で「4コマであるためには必ずしもマンガである必要はない」みたいなことになり、もはやマンガ的な4コマはマイノリティです。南無三。
4コマの「枠側」、単位のあり方を考える遊び、と捉えてみるとたぶん楽です。筆者はやたら複雑に捉えてるので面倒なことになってるけど。
透過問題とは / ゼロコマ
今回の話をするために、とりあえず「透過問題」という名前をつけました。
論点はひとつ、欠損をどう数えるか、です。
どういうことでしょうか、説明しましょう。
以下の作品があります。
この作品では、3コマ目に位置する部分を除く3点の長方形がくり抜かれ、向こう側がみえています。
この時の作者はこれを「1コマ」と評しました。が、のちには「4コマ」とか「5コマ」などと意見をコロコロ変えています。
どうしてこうも変動するかといえば、どこまでを「存在している」とみなすか、その【基準】がたくさん出てきたからです。
はしがきに書いたとおり、現代4コマではたくさんの視点から概念の見つめなおしを行います。
例えば——
画面が4つの領域で「構成」されていれば4コマ。
ただ4つの領域に「分割」されていれば4コマ。
「有効」な箇所が4つあるとわかれば4コマ。
他にも、4つが違うものと区別できれば4コマとか、4の数字がコマを作ってるから4コマとか、中身があるものだけが4コマとか、とにかく「こうでなければ4コマではない」と定義する考え方にも様々なものが併存し、あれも4コマ、これも4コマという状態になっています。
じゃあ、先ほどの「1コマ」はどうなの?
別解
このような作品があります。
表面的に見れば「グレーの市松模様が4個並んでいる」画面ですが、一般的にこの模様は、画像をとりあつかうソフトウェアが「透過部分」を示すために使うものです。つまり作者の意図を汲むならば「その部分が欠落している」ことを示しており、主張したい主題の部分は先ほどの「4コマではない / 1コマ」と同じ部分です。
ですが、先ほどの「1コマ」では欠落部分が「0」と捉えられているのに対して、本作者は「マイナス」だと訴えているのです。元々の欠落していない状態、4コマ揃った状態を「1」(100%)としています。
別解 / 有効コマ
この作品では写真の中で椅子の枠組みが複雑に絡み合って、ある視点から見て4つの空間に分けられている様を示しています。
物理的に、そこには4コマのための枠など存在しないし、中身などありえません。けれども、この作者はこの画面が「4コマ」だといいます。
考えてもみればその通り。この画面では床が向こうに透けていますが、床が椅子の枠によって4つのシーンに分割されています。
分割が起きると、枠がなくても、そこに面がなくても4コマを作ってしまうんですね。
ではなぜ先ほどまでの作品は「4コマではない」と考えてしまったのか?
「4個」の呪縛
4コマというものを考える時、軸にするのは当然のごとく「コマ」になります。そりゃ、4コマですし。コマが4個あるから4コマ、と考えがちです。
長方形などのある単位が4並列している状態が4コマだ、ということにして、このかたまりが有るか無いか、で物を考える。こうして、「コマの欠落」が「コマではない」のではないかという疑義がかけられたりしたのです。
でも、よくよく考えれば本質はそこではない。
なぜなら、4コマは「枠」だからです。
4コマの枠はあるエリアを4つの空間に分けるように示します。
4コマという個の塊ではなく、空間を4に分割する壁、仕切り……
もちろん個が4つあるのも4コマですが、しかし、それだけではなかった。
「4つに分かれた何かの物」だけではなく、
「何かの物を4つに分ける物」もまた、4コマなのです。
無は無のままでいい
そこに欠落があっても、4つの空間分割が起きていれば4コマと考えてOKというのが筆者の考えです。その先が無であっても。
部屋に複数の椅子があると、別に壁があるわけでもないのに、それぞれがそれぞれ座った人の領域になりますよね。けれども、空間自体は一つだけだし、誰も座ってないとただの一室にしか見えなかったりします。
つまり空間を分ける方法は「壁」だけじゃないってことです。
「中身」ではなく、「なぜ分かれているのか」とか「分けることができるか」に着目すると、4コマの可能性は広がります。
おわりに
何度も書いたように考え方は色々あります。作者の意図が全てということもあります。
この場所では「透過」部分は「ゼロ」ですよ、
「マイナス」ですよと作者によってドレスコードが設定された時。
従う楽しさもあれば、逆らう楽しさもあります。
今回は逆らってみましたが、あるルールに従ってものごとを視る試み。
これを色々な考え方でやってみると、たのしいのです。
漫画だけが4コマではなかったように。