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AIと人が共創する時代に大事なこと

AIはパートナーになったと実感

このnoteを書こうと思ったきっかけは、数週間前にv0というAIツールを利用し、私がAIを始めて「パートナー」だと実感したことでした。

v0とは、Vercel社が開発したAI駆動のUI生成ツールで、テキストプロンプトを入力するだけでWebサイトやアプリのUIデザインとコードを自動生成できます。本当に簡単で、誰でも使えます。

私は仕事柄、ChatGPTやClaude、PerplexityやDeepL、その他多くのAIツールを日常的に使っていますが、何かを調べるとか知るとか、正解を探すという感覚で利用している気がします。

ですが、v0の「AIと対話しながら」UI/UXを作っていく感覚は、デザイナーと一緒にプロダクトを作っていくような感覚に近いと感じました。

今は、UIだけではなく、バックエンド開発までサポートしており、生成したアプリケーションをすぐにデプロイして公開できる、「Bolt」を使っています。

Boltは、開発に必要なパッケージも自動でインストールされ、APIの連携やデータベースの操作も簡単にできるため、高度なアプリケーションをスピーディーに構築可能です。これにより、リアリティのあるプロトタイピングや、シンプルなMVPの開発もワクワクしながら進められます。

そうこうしているうちに、XではReplit Agentが盛り上がっていたり、GitHub Sparkだったり、ChatGPTがVS Code、Xcode、ターミナルなどを直接操作するようになるなど、プロダクト開発の手法が、ここ1ヶ月くらいで恐ろしい程にアップデートされそうになっています。



仕事のあり方はどう変わるのか

こういった状況において、私は自分が関わる仕事のあり方を考えながら二つの問いを立てました。

一つには、こういった素晴らしいAIツール(ツールではなくエージェントと言った方が適切でしょうか)は、デザイナーやエンジニアといったスペシャリストの仕事を奪うのか、ということ。

もう一つは、優れたAIツールによって、「誰でも」同じような成果を出せるようになるのか、はたまたこれまで以上に差が大きくなるのか、ということです。

人の仕事はAIに奪われて無くなるのか

まず一つ目の「人の仕事はAIに奪われて無くなるのか」ですが、当面は「No」でしょう。

その理由は二つあります。

一つは、マクロな観点で見ると、そもそも社会が求める仕事量に対して人間が提供する労働力は今後どんどん不足していくことになるので、仕事が無くなると言ってる場合ではないことです。

日本の場合、2040年に向けて労働需要は微増する一方、労働供給は高齢化社会による人口減少に伴い大きく不足します。需要が約6868万人に対して供給が約5767万人と、約1100万人、17%のギャップが生じます。

引用:リクルートワークス研究所,2023,未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる

単純に考えると、日本は一人当たりの生産性を17%向上させなければ社会は崩壊するので、そもそもAIにどんどん仕事を奪ってもらわなければいけません。


この記事にもあるように、AIによって、解雇された、契約を失ったというは実際にあるため、「仕事をAIに奪わる人はいない」ということではありません。
AIは社会課題を解決していく一方で、新たな社会課題を生み出す可能性もあります。


もう一つは、人はどんどん新しい仕事を作り出すということです。人間は必ずしも、生存するために必要な仕事しかしていないわけではありません。クリエイティブ、エンターテイメント領域の仕事の多くは、人の生存に直接関わりませんが、人が「豊かに」生きるために強く求められる仕事でもあります。

AIが人の仕事をどんどん奪ってくれることで、人はより「豊かに」生きるための仕事を生み出していくでしょう。

優れたAIツールによって、誰でも同じような成果を出せるようになるのか

二つ目の「優れたAIツールによって、誰でも同じような成果を出せるようになるのか」についてはどうでしょうか。

私が身を置くプロダクト開発に関連して考えてみます。

AIがデザインをし、コードを書いてくれるようになると、例えばエンジニアやデザイナーが現在行っている仕事は誰でもできるようになり、そういった専門職はなくなっていくのでしょうか。

私の考えとしては、専門職は無くなるのではなく、より突出した強みを持つことが求められるようになると思います。 一方で、現在エンジニアやデザイナーが行なっている特定のスキルを持たないとできなかったことはより一般化し、基礎的な知識や学習意欲のある人であれば誰でもできるようになっていくものも多いでしょう。

たとえば、v0やBoltなどを使えば、誰でもUIデザインを行うことが可能です。

しかし、最適なUI/UXをAIが一発で出してくれることはまず無いため、人間の介在が不可欠です。

この「人間の介在」が価値を持つようになるため「より突出した強み」が求められるようになると思う所以です。

AIが生成するアウトプットに対して、人間は自分の持つさまざまな引き出しからアイデアを出しながらAIと対話して改善を行います。

また、改善のプロセスにおいて多くの場合に様々なトレードオフが発生し、「正解がない中で決断を下す」ことが求められます。特に新しい体験や複雑な課題に取り組む際、人間の判断力と創造力が非常に重要です。

専門職(に限りませんが)に求められることが、専門的なスキルを活かして「アウトプット」を出すことではなく、新しい体験や価値といった「アウトカム」を生み出すことである、と考えると、AIは仕事を奪う存在ではなく、自身のアウトカムの質量を高めてくれるツールであり、パートナーとなるでしょう。

一方で専門「職」としてではなく、個々の専門「家」として考えた場合には、シビアな話もありそうです。

AIは人の生産性を劇的に上げてくれます。1人が対応できる仕事量が増えるということは、素晴らしいアウトカムを出してくれると期待される人に、仕事はより集中します。

つまり、AI自体が仕事を奪わなくても、AIを使いこなした人に仕事は奪われてしまう可能性は高い。

AI時代において、高いアウトカムを出すためには

では、このAI時代において、高いアウトカムを出せる人と出せない人の差は何か、という話を最後にしたいと思います。

高いアウトカムを出すために必要なこと、それは私は、現在PdMに求められることと非常に似ているのではないかと思っています。

PdMのバイブルとも言える名著「INSPIRED」の中で述べれている「PdMに求めれること」は以下の4つです。

  • 顧客に関する深い知識

  • データに関する深い知識

  • 自分たちのビジネスとステークホルダーに関する深い知識

  • 市場と業界に関する深い知識

つまり、「ドメイン知識」です。
特に最初の二つ「顧客に関する深い知識」「データに関する深い知識」は重要だと思います。

実際、私が現在一緒に仕事をしているLayerXのエンジニアやデザイナーは、結果を出す人ほど、直接顧客と対話したりデータを見たりドメイン知識の習得のための学習をするなど、貪欲にドメイン知識を得る努力をしています。

最近、MITの経済学PhD学生による「Artificial Intelligence, Scientific Discovery, and Product Innovation」という論文を見たのですが、同じようなことがことが書かれていました。

https://aidantr.github.io/files/AI_innovation.pdf

この論文は、AIが科学的発見とイノベーションに与える影響について分析した研究です。

アメリカのR&D研究所で1,018人の科学者を対象に、AIを活用した材料探索技術の導入効果を検証したところ、AIツールが材料発見率を44%向上させ、特許出願を39%、製品プロトタイプを17%増加させたことです。しかし、その効果は研究者の能力に大きく依存しており、上位の研究者の生産性は81%向上した一方、下位3分の1の研究者はほとんど恩恵を受けなかったそうです。

その「能力」というのが、「ドメイン知識」でした。

AIツールの導入によって、研究者はアイデア生成に費やす時間を減らし、判断タスクに費やす時間を増やしています。

しかし、下位の研究者は、AIによって生成されたアイデアを効果的に評価することが難しく、その結果、生産性の向上が限定的となったようです。

AIツールによって生成された候補を評価するためには、 ドメイン知識 が重要となり、 判断能力の高い研究者は、科学的な訓練や類似材料に関する経験を重視しており、これらの知識が成果に結びついてるとのことです。

まとめ

さて、v0を使って感動しました、という話から、だいぶ話題を広げてしまったので最後にまとめたいと思います。

  • AIは人と共創してくれるパートナーである

  • AIに仕事を奪われた結果、人の仕事が無くなることはない

  • むしろどんどん仕事を奪ってほしい

  • 人の仕事を本当に奪うのは、AIをパートナーとして高いアウトカムを出す「人」

  • AI時代に高いアウトカムを出すために最も重要なことは「ドメイン知識」

長々として文章を最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
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