海の風景が変わる時、食文化も変革する。「食」が解答方法だとすると、問題は「異分野」にある。
今日は、海の風景(風車?)の話から、これからの食文化の動きを考えてみたいと思う。
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ヨーロッパ・コペンハーゲン空港に降り立つとき、ふと窓の外に目をやると、海の中に、たくさんの風車を見たことがある人がいるとおもう。
洋上風力発電。現在、原子力発電もさることながら、日本で再生可能エネルギーを増やす切り札として、洋上風力が注目されています。
海の上は陸上よりも安定した強い風が吹くため、陸よりも大きな風車を設置できるメリットがあるほか、天候に左右されやすい太陽光や陸上の風力発電と比べてコンスタントに発電できると期待されています。
風車はこれまで海底に固定する「着床式」が主体で、海域の浅いヨーロッパで多くの建設実績があります。一方、日本のように浅い海域が少ないところでは海に浮かべる「浮体式」が向いていますが、技術的にはまだ確立されていません。
世界のトレンドは着床式から「浮体式(津波や高波に強い)」にシフトしていて、各社が開発競争をしています。
日本企業も浮体式の開発を急ぎます。戸田建設が長崎県五島市沖で、日立造船などが福岡県北九州市沖ですでに浮体式を1基ずつ稼働しています。また世界最大級の浮体式洋上風力発電には丸紅が参画することが先月、明らかになったばかりです。
浮体式は日本企業が技術的に有力とされていますが、既に3つのプロジェクトを進めるノルウェー石油大手のエクイノールが北海道沖で浮体式の建設計画を明らかにしていて、今後の競争による技術革新も期待されています。
日本の海域で実質初めてとなる洋上風力の大規模開発をどの企業が担うのか、注目が集まっていました。
2021年末に秋田県沖など3つの海域で公募、入札が行われ、3つとも三菱商事などの企業連合が選ばれました。
なぜ勝利したのか?それは三菱商事は、2020年にオランダの大手電力会社、エネコを買収し、発電設備と電力小売りの顧客基盤を強化してきたこと、そして近未来、2028年ごろから稼働・発電し、FIT、固定価格買い取り制度を通じて一般送配電事業者に売電する計画の見込みがあり、圧倒的な電力量の安さの共有が今回ポイントが高かったといえます。
一方で、2028年、つまり2030年前後には、日本海には圧倒的に洋上風力がベースとなり、わたしたちが今見ている風景が損なわれつつも、日常生活にとっては、切っても切れない状況が生まれるのは確かです。明らかに、そこの洋上、そしてそこで生育している生物の環境、情報が変わるのではないかと考えています。
僕は、明治時代の「北前船」を思い出しました。実は、東北の日本海側は、北海道松前から、青森鯵ヶ沢、秋田能代、男鹿、由利本荘、そして山形酒田、鶴岡と、漁業の拠点が多く存在しています。
その時、海岸沿いから多くの船の行き来を見た時、「時代が変わった」と思った人がいると思います。そして「これは環境破壊だ」「経済の混乱をきたす」と言った人もいると思いますが、結果、そこで培われた経済・ビジネスが、日本海側を豊かにし、多くの食材が「船」という物流システムを使いながら、一時代を築いていたといえるでしょう。そして、そこで生まれた、数多くの「食文化」「食の文化財」は多く存在します。
変革は突如ではなく、この毎日日々起きている情報を見ながらも、常に、この先、5年、10年を見据えていくことが正しく、できるだけ、情報の動きを見ていきたい。たとえ、必ずしも自分の領域になかったこと、特に自らの生活に関わりそうなこと、それに対して、世の中の人、企業がどんな動きをしているのか、ビジネスを企てようとしているのか、いわゆる著名人が話題にする、もっともっと前に、自分の「情報領域」に入れ込んでおかないと、次の5年、10年はない。
東日本大地震災が起こった2011年。これから5年、10年は震災復興だ、と、明確な目標と予算感が、東北、関東に目に見えてあった。一方関西では2025年の万博が目下の目標である。東京オリンピックでもそう。あからさまな目標は、えてして、人々を盲目にし、そこに目掛けて走っていこう、ゴールを目指そうと思うけれど、幕を開けてみると、「あれ?5年前のことが、今やっているみると精度が上がっただけで、答えは一緒だ!」と思うことはないだろうか。
僕はいま、その状況に辟易としている。
答えが一緒ならば、そこにいる意義はない。むしろ「問題が問題」だと思っている。考え方に大義名分がないと、いくらでも人材はいて、もっとスピード感がある人間が、あっという間に駆逐していく。もっと若い人間の方が行動力もある。しかし、20代、30代にないものとすれば「実績」という名の「時間の投資」だ。これは「生きていないと身につかないもの」である。20代には申し訳ないが、圧倒的に僕らの方が身近な問題が目の前にあり、かつそこの問題に、とても身近に「握手」するタイミングが待ち構えている。
そうして「握手する人間」を増やしていきたいし、僕もそうでありたい。
海の風景が変わる時、食文化は変革する。
「食」が解答方法だとすると、問題は「異分野」にある。
FoodniaJapan
松田龍太郎