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【韓国留学生の休暇】暮秋の大田紀行 - 大田の代名詞『聖心堂』訪問
昼食を摂った食堂からほど近い場所に성심당(聖心堂)本店があったので、ここで寄っていくことに。
聖心堂は大田ローカルの老舗ベーカリーで、1956年の創業以来65年以上の長きに亘り大田市民に愛され続けてきた、大田を代表する「郷土企業」。
創業者のご夫妻は、北朝鮮・咸鏡南道出身で、1950年の朝鮮戦争中、興南埠頭撤収作戦を経て、韓国・慶尚南道に避難してきた。その後、ソウルに移住しようと列車に乗って移動していた際、列車の故障で意図せず大田に留まることになった。大興洞聖堂から援助された小麦粉2袋をもとに、大田駅前で蒸しパン屋を開業し、現在の『성심당』へと発展した。(参照: 聖心堂公式ホームページ)
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聖心堂オフィシャルの言葉を借りれば、聖心堂は「大田の文化」。
大田の文化を体験するべく、私たちも待機列に並ぶ。
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列は目を疑うほど長かったが、回転が非常に速いため、20分ほどで入店することができた。
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パンの種類がとても多く、しかもどれも美味しそうで、どれにしようか決められない。悩む。ここ最近で1番幸せな悩み。
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それにしても、人が多い。
店内は進行方向が定められているわけではなく、自由に動き回れる。列の進みを気にすることなく心ゆくまで吟味して購入できるのは大変ありがたいが、流石に無秩序状態。カオス。
喩えて言うなら、閉演間際の某テーマパークの最も出口に近いスーベニアショップの混雑具合と慌ただしさ。
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やっとの思いで、튀소구마(ティソグマ)と、크림치즈화이트번(クリームチーズホワイトボーン)をチョイス。
次の日も来る予定があったため、当日食べる分だけ購入した次第。私も大人になった。
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久々に全身で浴びることができた小麦の匂いとの別れを惜しみつつ、お会計を済ませ、外へ。
店内の込み具合とは裏腹に、お会計は一切待たずスムーズに終えることができた。
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昼食を1時間前に終えたばかりで満腹だったにも拘わらず、出来立てほやほやのパンの誘惑に負け、食べ歩きを目論む同行者たち…
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私もおもむろに「튀소구마」を取り出す。
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튀소구마とは、聖心堂の看板メニュー・튀김소보로(ティギムソボロ)の中の小豆餡を고구마(サツマイモ)餡に変えたもので、オリジナルの튀김소보로に並ぶ人気を誇る。今回の訪問に際し、大田出身の知人たちに聖心堂のオススメのメニューを訊いて回ったところ、튀김소보로と튀소구마共に、その言及率は100%だった。
ちなみに튀김소보로とは、その名の通り、韓国の定番パン「소보로빵(そぼろパン)」を揚げたもの。そして、소보로빵とは、魚肉を炒って味付けした、日本人に馴染みのある「そぼろ」が入った惣菜パン… ではなく、砂糖、バター、小麦粉を混ぜた甘くてサクサクしたクランブル(=そぼろ)を上にのせて焼いたパンのこと。加えて、中に餡やクリームが入っているものも多い。(終わらない説明のループ)
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揚げたての튀소구마は、期待の何倍も美味しかった。
韓国人たちの間では屡々、「聖心堂は全国一の味というわけではなく、その価格に見合う満足のいくクオリティではあるものの、特別に称賛されるほどの味ではない」という冷静な評価が下されることがある。
無論、どこか1つのお店を「全国一」と評価すること自体に無理があるのは前提として、高い人気と集客率を誇る聖心堂においては、その回転の速さが顧客に常に出来立てのパンを提供することを可能にしている。튀김소보로のような揚げパンの類は特に、時間の経過による味の変化が顕著だが、製造から顧客の口に入るまでの時間が競合他社よりも短く、より美味しい状態を味わえるという点も、聖心堂のパンが高く評価される要因なのではないかと思う。
また、前述の通り聖心堂は大田ローカルの企業であり、大田市内に本店を含め5店舗を構えているものの、その高い人気と多くの要望にも拘わらず、大田市外への進出には踏み切らないという強気の姿勢をとっている。「大田でしか出会えないパン屋」であることに誇りと信念を持ち続け、「大田の郷土企業」としての立場を守っているのだ。このような信念に基づいた経営形態と、「大田に行ってこそ味わえる」という特別感が、聖心堂の人気の秘訣なのだろう。