ソウル鐘路区は、付岩洞。景福宮を越え青瓦台を越え、更には地下トンネルを抜けた先に漸く見えて来るのは、石坡亭ソウル美術館。石坡亭(석파정/ソクパジョン)は、朝鮮王朝末期に興宣大院君という政治家の別荘として造成された近代遺跡で、ソウル市有形文化財第26号にも指定されている。ソウル美術館は、石坡文化院によって同敷地内に2012年に開館された。ソウル美術館においては、「鑑賞者が創造者になる美術館」をモットーに、毎シーズン様々な所蔵品展及び企画展を開催している。今回は、2024年7月の訪問を、写真で記録していく。最寄りのバス停を降りてすぐ、私の目に飛び込んで来たのは、馴染み深い「あの」カボチャだった。この時期の所蔵品展は、『나는 잘 지내고 있습니다 I'm fine, and you?』。絵画や書、手紙を通じ、芸術家たちの芸術家としてではない、平凡な1人の人間としての生き様に対する省察することを鑑賞者に促す展示となっているという。今回の所蔵品展の目玉は、初公開となる、이중섭(李仲燮/イジュンソプ)画家が家族に宛てた絵手紙である。美術を学ぶべく1936年に日本に留学した彼は、1939年に後に妻となる日本人の山本方子氏と出会い、1945年に結婚。しかし、1950年に朝鮮戦争が勃発し、李は韓国の済州島に移住し、妻子は日本に戻った。その後も200通以上の手紙を交わしたが、再会は一度きりで、1956年に極貧の中で亡くなったという。生前は困難な生活を送っていたが、死後、その作品が評価され、韓国の国民的画家とされている。李には2人の息子がいた。彼は2人の息子に向け、同じ絵と同じ文章をかいた絵手紙を、毎回2通作成し、送っていたという。ここまでの背景を知り、どう涙をこぼさずにいられるというのか。続いて、企画展『햇빛은 찬란 Brilliant Sunlight』へと向かう。光をテーマに、絵画やメディアアート、彫刻などの現代美術が展示されている。でんっででんっでででででんっっっちょっと違う「これは一体何なのか?」と、今回1番頭を悩まさせられた、家住利男さんのガラスアート。白い台座にエメラルドグリーンのガラスが映えること。これは、「椅子用クッションに見えるから座ってるポーズとってみてよ、後で合成してあげる」という友人からの無茶振りに、言われるがままの私。そういえばまだ合成してもらってないな?訪問から2ヶ月経った今も尚、この作品を目にしたときの感動は鮮明に記憶している。フレーム内に無造作に置かれた薄い金属のプレートに、上下から当たる光を互いに反射させ、アートを創り出している。友人も私も思わず魅入ってしまい、この作品のエリアだけで10分は留まってた気がする、割と本気で。横から見るとこんな感じ。覗く角度によって、こんなに見え方が違う。最後に石坡亭も散策。やっぱり韓屋は落ち着くなぁ。