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#9 攻撃にはいつ、どのくらい人数をかけるべき?【サッカーにおけるPA内侵入に関する一考察】

サッカーで勝つためには、得点をあげることが重要です。

サッカーでは2点取ると勝つ確率が負ける確率よりも高くなるとされています(アンダーセン・サリー,2014)。

そのため、勝ち点をとるために目標となる得点数は2点となります。

では、どのように得点をあげるのか。

以前の記事で書きましたが、サッカーでは得点の70%程度がPA内からのシュートによって生まれています。

ということは、PA内でいかにシュートを打つかが得点をあげるためにはとても重要になります。

そこで今回の記事では

W杯グループステージを突破したチームのPA内の攻撃の特徴
に着目した論文をもとに

得点をあげるためのPA内での攻撃方略を探ります。


論文紹介

タイトル

サッカーにおけるペナルティエリアへの侵入に関する攻撃プレーの分析

対象

2014FIFA ワールドカップのグループステージ全 48 試合

主な結果

上位(グループステージ突破)群は下位(グループステージ敗退)群に比べて

  • 得点数、シュート成功率、攻撃成功率が高かった

  • PA内侵入方法ではクロスが少なかった

  • PA内侵入前時点で守備選手と同数の人数がPA内にいることが多かった(下位群は守備選手が多数のことが多かった)

  • 守備選手と同数の時、相手守備選手は2人以下であることが多かった

考察

この論文の結果からはまず
上位群と下位群の違いはシュート成功率にあった
ということが示されています。(シュート数に有意な差はありませんでした。)

この違いを生んでいる一つの要因として
PA内での攻撃選手と守備選手の人数差
をあげています。

PA内侵入前の時点で
上位群は相手守備選手と同数を多く作っており
下位群は相手守備選手が多数の状況が多かった

なおかつ

同数を作れている時は
相手守備選手が2人以下の状況が多かった

ということなので

上位群は
相手守備人数が少ない状況(2人以下)を逃さず人数をかけられている
ことが考えられます。
可能性としては
下位群が守備に戻れていない
ということもあるでしょう。

逆に、守備選手が3人以上PA内にいる状況では
同数、もしくは守備選手より多数の攻撃選手を配置することが難しくなります。
守備選手が多勢になると得点率は下がります。
つまり守備側としては
少なくとも3人は素早く戻すべき
ということが言えそうです。

現場への示唆

相手守備選手が2人以下と少ない状況を逃さない。
これが得点をあげるために攻撃側に求められるPA内での攻撃方略の一つとなります。
このことは、ハイプレスやカウンターの重要性を裏づけているとも考えられます。

守備側としては
3人
という人数が一つの基準になりそうです。
3人戻れば失点しないという意味ではないですが。

研究の限界

対象がW杯のため、他の大会にどの程度当てはまるかはわかりません。
また、この研究では実際に何人PA内に侵入させたか、というデータは提示されていないため、より具体的な考察は難しいです。

まとめ

得点をあげるためのPA内の攻撃方略について考察しました。
やはり守備側の人数が多い状態では得点をあげることは難しく、
得点をあげる為には
守備側が少ない時にどれだけ人数をかけられるか
がポイントになるようです。

参考文献

毎度紹介していますが、本当に面白いのでおすすめです。

鈴木健介・浅井武・平嶋裕輔・中山雅雄(2021)サッカーにおけるペナルティエリアへの侵入に関する攻撃プレーの分析.体育学研究,66,261-275.


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