素人落語で初高座を演った日
私が高校生の頃に学校寄席というものがあり、名古屋弁の落語家が方言をネタにした落語を話していた。おそらく三遊亭円丈師匠…だと思う。その後、大学生の頃にテレビ番組の公開収録があり、友人が当たったというので一緒に見に行った。その時は桂米朝一門の落語会で、桂ざこば師匠が「厩火事」、桂米朝師匠が「つる」をやっていた…という程度である。
その後東京に来て、友人が「快楽亭ブラック師匠の独演会に行かないか」と突然誘われ、付いていったのが運の尽きというかなんというか。タブーなしに何でも語りまくる師の芸風に惚れてしまって、他の会にも行ったりCDやDVDを買ったりした。だが実家に帰って就職するとなかなかそういうのにも行けず、落語のこともなんとなく「聞く」という程度になっていった。
それが、なぜか今年の12月に素人落語で初高座というのだから、なんだかよくわからない。謎である。
きっかけは、今年の8月に市内のスナック兼古本屋という妙なお店で、素人落語家の独演会を聞きに行ったことであった。お店自体がちょっとサブカル気のあるお店だから、その素人落語家氏は普通ではかけられないような新作をいくつか演っていた。終了後、思わず私は話しかけていた。いろいろ落語談義をするうち、この縁はこのまま続けたほうがいいんじゃないかと思うようになり、その方に「弟子入り」していたのである。その方には一番弟子が既にいたので、私は二番弟子となるわけだが。
とはいえ、師匠は仕事が忙しいらしくて落語を教えてもらえることすらできない。一ヶ月ぐらい生殺しで何も出来ない日々が続いた。そのうち、一番弟子(私にとって兄弟子)から「私がやってるアマチュア落語の会があるんですけど入りませんか」と言われてのこのことついていった。県内にはいくつかのアマチュア落語会があるらしいのだが、私がのこのこついていった会はその中で一番ゆるいのではないかと思う。10月の集まりに行ったら「12月に発表会がある、何やりますか」といきなり言われたのである。なんだそりゃ。「いや上下も知らないんですけど」と言ったら、他の人が「いやYouTubeでも見て覚えれば大丈夫だから」と。びっくりである。思わず「じゃあ【道具屋】で」と何も考えずに言っていた。おそらく「芝浜」と言ったら「おお、すごいですね!」と言われたに違いない。そんなゆるくていいんだろうか…。
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