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「なぜ?」で解剖するminneのLPデザイン
こんにちは🎅
GMOペパボ株式会社のハンドメイドマーケットサービス「minne」でデザイナーをしております、sziaoreoです。
デザインは、無数の選択肢から最適解を導き出すプロセスから生まれます。 そのため、デザイナーは常に「なぜ?」という自問を繰り返して選択の根拠を探ります。
先月リリースしたminneのクリスマスLPは、「クリスマスの香り漂う少しポップな蚤の市」というテーマでデザインしました。 こちらの記事では、このLPのデザインプロセスを「なぜなぜ問答」で解剖します。
なぜ、テーマを「クリスマスの香り漂う少しポップな蚤の市」にしたの?
minneの目的や提供したい世界観などの要件を網羅するためにこのテーマになりました。
なぜ、「蚤の市」なの?
これには3つの理由があります。
「探す楽しみ」「試行錯誤の末の新しい好きとの出会い」というminneの価値の体現。
ターゲットである「メリハリ消費に乗れる経済的余裕があり、持ち物やインテリアなどにこだわりを持つ30〜40代女性」が没入できる世界観。
「ハンドメイド」のイメージを覆し、価値を向上させるハイクオリティ&高価格帯作品の訴求と、minneの新たな強みであるアンティークヴィンテージカテゴリーとの親和性。(「蚤の市」は、日本では希少なアンティークや、他にはないアイテムが揃う非日常感溢れる空間として認識されていると判断したため)
なぜ、「少しポップ」にしたの?
クリスマスらしい高揚感や、minneが持つはつらつとしたエネルギーを表現するために「少しポップな」要素を足しました。
また、純粋に「蚤の市」としてしまうとアンティーク・ヴィンテージのイメージに偏りすぎてしまい、今回のクリスマスLPで一緒に訴求したいデザイン性の高い個性的なアイテムが馴染まなくなってしまう可能性があるという背景もありました。
なぜ、「クリスマスの」ではなく「クリスマスの香り漂う」なの?
特に作品選定の際に季節性にフォーカスしすぎないようにするためです。
クリスマスにまつわるモチーフやデザインの作品が集まりすぎた結果、「これ素敵だけどクリスマスにしか使えないしな…」という心理的なブレーキによってユーザーの購入意欲が下がることを避けるため、「クリスマスの香り漂う」にしました。
なぜ、タイトルは「minne Holiday Market」にしたの?
まず、「探す楽しみ」や「宝探し感」を演出するために「Market」という単語を採用しています。
しかし「Christmas Market」とするとクリスマスにまつわるものしか売っていないような印象を与えてしまうため、もう少し広い定義を持つ「Holiday」を使用しました。
他にも探す楽しみにフォーカスした「minne Holiday Finds」やワクワク感にフォーカスした「minne Merry Market」なども候補に上がりましたが、日本人にとって馴染みある英単語で完結できる「minne Holiday Market」に落ち着いています。
ちなみに「蚤の市」は本来「ガラクタ市」というようなニュアンスも含むため、作品の立場や価値を損なわないためにも表に出るテキストには「蚤の市」「flea market」という言葉は使わないという判断をしています。
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なぜ、このデザインなの?
「クリスマスの香り漂う少しポップな蚤の市」というテーマに基づいています。少しレトロなテイストのデザインからリファレンスを集め、エッセンスを抽出してデザインしました。
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なぜ、この色なの?
クリーム色の背景で少し色あせた温かみを演出。赤と緑を基調としたクリスマスカラーを使用しつつ、アクセントとして紫とピンクを採用してポップさと抜け感を与えています。
また、minneらしさを担保するため、全体的な締まりを作るためにブランドカラーである黒をテキストに採用。
フォントでは世界観の醸成を重視した分、バランスを取るためにカラーは全てminneのカラーパレットから使用しました。
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なぜ、このフォントなの?
集めたリファレンスに頻繁に利用されていたもので、少しのレトロ感、親しみやすさ、可読性などをバランスよく担保できるもっちりとしたセリフ体を選びました。
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なぜ、このイラストなの?
minneのギフト訴求の意図を踏まえ、イラストのモチーフはプレゼントにしています。
さらに蚤の市をイメージしているので、整えられた空間ではなく少しのカオス感をビジュアルから表現したく、積み上げたプレゼントに「がたつき」を与えています。(同様に作品エリアもがたつかせています)
綺麗に包装されたプレゼントだけでなく、粗野に包まれたものや剥き出しのものも描きました。抽象化した幾何学的な図形をベースにし、色との組み合わせで少しモダンな印象を作っています。
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なぜ、作品エリアに罫線を引いたの?
minneは基本的に情報量をコントロールするためにアウトラインは使用しませんが、トピック性の高い特別なクリスマスLPとして普段とは異なる雰囲気を演出するため、あえて罫線を採用しました。
またライン描写を採用しているイラストとの共通点を作ることでLP全体の視覚的な解像度を揃えたり、作品エリアのがたつきを分かりやすくする役割も担っています。
なぜ、モーションを入れたの?
クリスマスらしい遊び心や、イラストにも込めていたカオス感を可愛らしく演出するためにグラグラさせたモーションを入れています。
ディレクターさんより少しワクワクするような動きがあると嬉しいというお話を伺っていたのと、LPのビジュアルデザインの新たな選択肢として、モーションで視覚的なフックを作る前例をminneに作りたいという個人的な思惑もありました。
なぜ、デザイナーが作品選定に参加したの?
通常は作品選定は基本的にディレクターさんにお任せしますが、今回のクリスマスLPではデザイナーが作品リストのイメージボードも作成し、選定にも参加しています。
「クリスマス」「蚤の市感」「少しのポップさ」のバランス感が肝になり、その塩梅を言葉で共有するのが難しいため、作品リストに関しても視覚的な参考が必要と判断しました。
またキックオフが遅れたことや、選定作品数の増加によりディレクターさんの負担が大きくなったため、リソースを補う必要があった背景もあります。
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このような「なぜなぜ問答」をチーム間や自分の中で繰り返すことで、レトロでありながらも現代的なポップさを持ち合わせた、ヨーロッパの蚤の市のような温かみのあるクリスマスの世界を作ることができました。
「なぜ?」に答えられないとき
「なぜ?」に答えられない時は、自分のデザインについてその必然性をうまく言葉にできていない時です。
デザインを言語化することは検証やチームでの合意形成に重要ですが、初めから完璧を目指す必要はありません。
まずは目的や意図を踏まえて、思うままに手を動かし、自分が「なんとなくこれがいいと思う」デザインを作ってみてください。 ある程度形になったら、「さて、なぜこの目的に対して自分からこのデザインが出てきたんだろう」と客観的に観察して、少しずつ言葉にしてみてください。
こうして言葉にすること、形を作ることの行き来によって、効率的にデザインを検証できるとともに「このデザインであるべき理由」を言語化することができます。
以上、「なぜ?で解剖するminneのLPデザイン」をご紹介しました。デザインを行う際はぜひ一度「なぜなぜ問答」を取り入れてみてください。
魅力的な作品が詰まっているので、minneのクリスマスLPにも遊びに来てくださると嬉しいです。
こちらはGMOペパボデザイナー Advent Calendar 2024 12/10の記事です。
最後までお読みいただきありがとうございました&引き続きペパボデザイナーズの記事をお楽しみに〜🎄