9割の人間は行動経済学のカモである
橋本之克
〇非合理な判断を生む社会環境
情報の巨大化…情報の多さが判断を狂わせる。
生活者操作のステルス化…インターネットの発達により誰もが容易に情報を発信できる。理的な選択、正しい判断ができない。
景気の不安定さ…未来が読めず、合理的な選択、正しい判断ができない。 ⇒行動経済学を知っていれば不安や問題に対応できる!
⇒行動経済学を知っていれば不安や問題に対応できる!
◎「サンクスコスト」…すでに使ってしまい二度と戻らない時間やお金。
これにこだわりそれ以上に時間やお金、労力を使ってしまう。
例:ゲーム
〇「機会費用」…選ばれなかった選択で得られたはずの利益。
〇「損失先送り効果」…サンクスコスト効果にハマった後、これをやめるまでに費やしたコストを損失として確定する際に先延ばしにしたいという決断を妨げる効果。
例:為替や株の損切
〇「損失回避」…トクをする場面で確実な利益を選択し、損しそうな場面では一か八かの選択に出る。
◎「プロスペクト理論」…何らかの価値の評価、そこから得られる満足は「絶対量」ではなく「変化」によって決まる。
・「参照点」 物事の評価の基準となる点。
・「確率加重関数」 0%に近いほど高く感じ100%に近いほど低く感じる。
例:雷にあたる確率、宝くじが当たる確率、成功率が80%の手術。
「参照点依存症」 参照点によって満足や評価などの結果が左右される。例: Aさん 昨日100万円持っていたが今日は500万円持っている。
Bさん 昨日900万円もっていたが今日は500万円持っている。
二人とも今日は500万円だが参照点が違うため、Aさんのほうが幸せ度が高い。
⇒物事の良し悪しを判断する際に常に熟考ではなく直感で行う。そのため最終的な結果よりも変化を重視する。
◎「保有効果」…自分の所有物に対して高い価値を置く心理的バイアス。
◎「同調効果」…他人と同じ行動をとってしまうこと。特に選択や判断が難しい場合、他人の決定に影響されて自分の決定の根拠としてしまう。
➡「サンクスコストによるやめられない感づくり」「保有効果による愛着」「同調効果によるつながり作り」がマーケティングでは重要!!
〇「異時点間の選択」…なにかを決めたときと実際に損失や利益を受ける時点が異なるもので非合理的な意思決定をしやすい。
〇「現在重視バイアス」…将来の利益よりも目先の利益を重視する。
〇「一貫性幻想」…意思決定において理論的であろうとする。その時にその決定において矛盾が生じると心の中で認知的不協和を抱え、それを無意識に解消し、一貫性を回復しようとする心の動き。
〇「感応度逓減性」…トクも損もその値が小さいうちは小さな変化が大きな価値変化をもたらす。
〇「現状維持バイアス」…人は損失の可能性があれば何とか避けようと現状に固執する。
〇「確実性効果」…人間は確実に起こることを重視するため確実に得られるトクには強い魅力を感じる。逆にトクする確率が非常に高くても確実でなければ魅力がぐっと下がる。
◎「ヒューリスティクス」…正確な情報が得られないと直感あるいは限られた情報だけを頼りに判断してしまう傾向。
①「利用可能ヒューリスティクス」
利用しやすい根拠で判断してしまうバイアス。
②「再認ヒューリスティクス」
過去に聞いたことがある・既に知っているもの>初めて聞くもの
③「代表性ヒューリスティクス」
あるグループに所属する特定の集団やメンバーにおいて典型的と思われる事柄に着目しすぎるあまり、その確率を過大評価してしまう。
例:高校の窓ガラスを割ったのは? A 高校生 B 不良の男子高校生
⇒よく考えればBはAに含まれるし普通の高校生がやった可能性もあるが多くの人はこの問題を見たときにBと判断してしまう。
〇「大数の法則」…標本が大きいほどその集団の性質を正確に表す。確率は試行回数が多いほど正確な確率が出る。
〇「小数の法則」…小さい標本や試行回数であるにもかかわらず「大数の法則」が当てはまると錯覚すること。
例:打率2割5分のバッターが3打数無安打でむかえたとき、「次は打つ!」と思う。
⇒これは打率2割5分という大標本を4打数という小標本に置き換えてしまっている。
〇「アンカリング調整」…最初に注目した値が後の判断を大きく左右するバイアス。特定の情報や値に過度に注目し、その後の状況でほかの要素を考慮して、調整したうえで判断を下す傾向。
*最初の情報や値は「アンカー」と呼ばれる。
〇「ハロー効果」…人や物への一つの鮮やかな印象が総合的な印象に影響するもので第一印象に引きずられることで「アンカリング」と近い。
*ハローとは後光。
例:ハリウッドスターがプリウスに乗っているのが世界に流れた。そのことでプリウスはハリウッドスターが選ぶほどカッコよく、ステータスがあり、優れた車であるという印象を多くの人に与えた。
〇「確証バイアス」…一度自分の意思を決めるとそれを裏付ける情報ばかり集めて反対の情報を無視するバイアス。「合理化」や物事が起きてからそれは予測可能だったと思う「後知恵バイアス」も同じような原因で起きるバイアス。
〇「ハウスマネー効果」…ギャンブルなどで得たお金(あぶく銭)はぞんざいに使い、最終的に失ってしまう。
〇「反転効果」…ポジティブな状況かネガティブな状況かで選択が反対になるバイアス。
◎「フレーミング効果」…人間は同じ内容をみても状況や理由によって異なる受け取り方をする。問題をどう表現するかで異なる判断や選択をしてしまう。
〇「初期値効果」…初期値(デフォルト)によって行動や選択が変わってくること。
例:通販の購入画面でメルマガを受け取るにチェックが入っている。
〇「貨幣錯覚」…人々がお金に関する判断を実質値ではなく名目値で行う。
例:1%のデフレ経済で給料が500万から499万になった。
⇒物価1%の下落に対して給料は0.2%しか下がっていないので0.8%の上昇となる。
〇「メンタルアカウンティング」…様々な要素を踏まえて合理的に判断するのではなく比較的狭いフレームで判断を行うバイアス。
例:雨の日のタクシーはいつもより客が増え、早くにその日の目標に達するため今までの目標達成は考えずに早くに仕事を切り上げることが多い。
〇「損失非対称性」…同じ金額でもトクした時の喜びより損をした時の悲しみの方が大きくなる。
〇「時間選好率」…高いほど現在の消費を意識し、低いほど将来の消費を意識する。
〇「現在志向バイアス」…将来よりも現在を重視する傾向。目先のトクに目がくらみ、将来のトクを逃したり、後から損をする。
例:衝動買い、クレジットカードの使いすぎなど。
〇「上昇選好」…時間の経過に連れてトクや満足が拡大することを選ぶ傾向。
◎「時間割引率」…将来価値を現在価値に換算するとき、どのくらい割り引いて考えるか。
例:今すぐに1万円もらえるが5年後だったら1万5千円もらえる。
人間は間近の出来事に対しては現実的に考えて「せっかち」になるが遠い先の出来事に関しては楽しみや理想的に考えて気長になる。
例:2日後の予定変更と2か月後の予定変更。
⇒「時間割引率」の高い人ほど長期的ビジョンがなく、現在のトクを優先し将来の損に対しても鈍感。
〇「決定麻痺」…多すぎる選択肢は決められず先送りや誤った選択をするなど決定を妨げる可能性があり、選択する側からするとストレスになる。
⇒選択肢を提供する側は多くの提示よりも専門家の意見やレビューなどを活用し、選ぶ側のストレスを軽減するほうが重要。
〇「計画錯誤」…時間や予算など計画実行に必要な資源を常に過小評価する傾向。そのため計画の実行は簡単だと楽観的に評価してしまう傾向になる。しかし「自分にはできる」と予測を表明することはそのまま自分自身の像を定義することになるので自信がつき、ポジティブになれる可能性も期待できる。
計画を立てる際、①現実的になること②要素を詳細に検討すること③期間は悲観的な予測のもとに長期間と考えることが重要である。
〇「後悔の回避」…損をしたという事実に加えて損失につながる判断に関わったという考え方から責任を感じ、責めたくなる感情が湧く。
〇「返報性の原理」…他人から何らかの施しを受けた場合、お返しをしなければならないという考え。 例:スーパーなどの試食など
〇「ブレークイーブン効果」…単純に買ったものが値上がりするより含み損が回復して利益が出る方を優先し、リスクの高い判断をすること。
〇「自信過剰バイアス」…特に自信を持っていることほど判断を誤る。
-素人投資家は損をするー
「損失のダメージが強まる」
・株価や為替の値動きが気になってしょうがない。
・「損失非対称性」により悲しみの方が大きくなって消耗していき、結果的に冷静な判断ができなくなる。
⇒人間は絶対値で評価するのが苦手なので何らかの基準を定め、相対比較で評価する。
「損失で身動きできなくなる」
・「後悔の回避」から損切ができない。
・「損失回避」からネガティブな時ほどリスクの高い決定をする。
⇒時間がたっても好転しなければ値動きを見ることも苦痛になり、新たな機会を逃す。
「トクが損の原因になる」
・トクをすると自分の力や才能によるものと勘違い。
・女性の投資家より男性の投資家の方が損をしやすい。
理由は男性の方が自信過剰になったり、チャレンジ精神があるため、売買回数が多くなってしまう。
⇒自分が所有していないかのような意識をもち、投資している対象と自分を意識的に離すことでどんな状況でも冷静に判断することが必要となる。
→メンタルの強さが重要
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