【読書メモ】 生涯投資家
村上世彰 著
1. はじめに
○投資とは
•「将来的にリターンを生むであろうという期待をもとに、資金・資源 をある対象に入れること」であり、投資には必ず何らかのリスクが伴う。
しかしながら投資案件の中には、リスクとリターンの関係が見合っていないもの、つまり、リターン>リスクとなる投資をするのが投資家だ。
•父の教え「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。一番安いところで買ったり、一番高いところで売れるものだと思うな」
•投資家の資質というのは三割はDNA的に受け継ぐもので、七割は経験。
○上場のメリット・デメリット
・企業とその経営者にとって、上場には二つのメリットがある。ひとつは、株式の流動性が上がること。すなわち、株式が換金しやすくなる。そして資金調達がしやすくなる。
•デメリットは上場していることに伴う業務が多く、見えないコストもかかる。もう一つは、いつ誰が自社の株主になるかわからない。端的に言うと、「誰が買ってもいい=誰でも株主になれる」状態。
○コーポレートガバナンス
•投資先の企業で健全な経営が行なわれているか、企業価値を上げる=株主価値の最大化を目指す経営がなされているか、株主が企業を監視・監督するための制度。
•経営者と株主の緊張関係があってこそ、健全な投資や企業の成長が担保できるし、株主がリターンを得て社会に再投資することで、経済が循環していくメリットがある。
2. 投資家と経営者とコーポレートガバナンス
投資家:リスクとリターンに応じて資金を出し、会社が機能しているかを外部から監視する。
経営者:投資家に対して事業計画を説明し、社内の人材や取引先などをマネジメントして最大限のリターンを出す。
○期待値、IRR、リスク査定
•期待値を的確に判断するには、投資対象の経営者の資質の見極め、世の中の状況の見極め、経験に基づく勘など、実に様々な要素が含まれる。期待値1.0を超えなければ投資する価値はない。
•企業がその投資資金によって新たな資金を生み出し、加速度的に事業を大きくしていくことができるかどうかを、相手の商慣習や国ごとの政治的なリスクも踏まえて見極めることである。こうした資金循環が期待できる案件では、必然的にIRR(内部収益率)が高くなる。15%以上は必要。
•投資につきものであるリスクを査定する際には、定量的な分析よりも定性的な分析が重要なポイントとなる。数字や指標の判断よりも、経営者やビジネスパートナーの性格や特徴を摑むことが重要。
○経営者
•日本の上場企業には、自社株も持たずに経営をしている取締役が多すぎる。給与や賞与という安定的な収入のみで、株価に連動するリスクとリターンがない。
だから彼らは株価を気にせず保守的な経営に走り、退職金や賞与の形でいかに自分たちが利益を享受するか、に主眼を置いてしまう。
•どのような資金配分が企業価値の向上に最も寄与するのか、最大のパフォーマンスを追求できる判断ができる経営者こそ、優れた経営者と呼べるのだ。
•従業員は、経営者についていく存在だ。
彼らにとって投資家は非常に遠く、直接触れ合う機会もないのが一般的だから、日々の業務の中で株主を意識することは難しいかもしれない。
だからこそ、経営者が株主の視点を持って社員を引っ張っていくことが、企業価値、すなわち株主価値を向上させていく上で非常に重要なのだ。
○累積投票制度
•株主総会で複数の取締役を選任する際、各株主に対して、選任する取締役の人数と同じ数の議決権が与えられる。
株主は、その議決権を各候補者に分けて投票することもできるし、一人の候補者にすべての票を投じることもできる。
投票の結果、得票数の多い者から順次取締役に選任されるという制度。
•累積投票制度を使うと、少数株主でも取締役を送り込むことができる。
•資金の好循環は、必ず派生的な好循環をもたらす。取締役に株主の視点を取り入れ、市場で正当に評価される企業に生まれ変わるように、変革を促すことが最優先である。
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