春が似合う女
川口春奈と、TBSの春ドラマは相性がいい。
『着飾る恋には理由があって』の時もそうだった。パステルカラーで少し個性的なファッションを纏って、まっすぐ仕事と恋に向き合う姿に
私は憧れと、ちょっとした親近感と、少しだけ達観した目で見つめる気持ちを持ちながらはーちゃんの織りなすラブストーリーをずっと観ていた。
『silent』は耽美的な、どこか儚く切ないラブストーリーだった。
でも私は、リアルと夢を見せてくれるTBS系のドラマがなんとなく好きで。
多分そこにある世界は私の理想と願望と、ちょっとした自己投影があるんだと思う。
昔から企画を考えることが好きだった。
TBSドラマの中でのはーちゃんはいつもクリエイティブ。アイデアを現実に変えるために奔走して、恋愛にもド直球。ド直球すぎて、相手とファスナーの掛け違いが起こるくらいド直球。でもそんなひたむきなはーちゃんの姿に、何か心を動かされるものが毎回ある。
私もここ真似してみたいなとか、こんなことがしてみたいな、とかそんなヒントをもらえたりもしてね、
はーちゃんが演じてきたくるみも七苗も少しキャラが似ているのに対し『着飾る〜』の瞬と『9ボーダー』のコウタロウは正反対。
どちらも甲乙付け難いし、どこか理想とはかけ離れた面も持っているところが絶妙に心に刺さってしまう。
コウタロウは記憶喪失で、過去に何かの影があって、でも人柄はめちゃくちゃ良いやつ。
社会的にみたら責任を取れるかも分からない人間が、愛をぶつけて物語を始めていいのか?なんて堅い見方もできてしまう。
コウタロウ自身の中にもある少しの葛藤と、でもそれを凌駕するくらい七苗を思い、惹かれあっていく二人の心がもはや神秘的ですらある。
「ななって呼ぶって決めた」
そう言われてハートを掴まれる川口春奈の姿は、キョトンとしてとても愛らしい。
主人公の七苗が、仕事に忙殺された日々から
新しい人生を歩み始めたのは、今までの影での努力が実り始めている予兆だと私は勝手に思っている。七苗はしっかり者で頑張りすぎるあまり、人の気持ちに少し疎かったり、どこかで損をしてしまうところもあるけれど、がむしゃらに現実と闘う姿はどこか応援したくなる。
そんな一生懸命さに、コウタロウも心を動かされたのかもしれない。
姉の六月や妹のハ海たちのちょっと捻りのあるキャラと、彼女たちの恋物語も良い塩梅を出している。
人を好きになるってなんて素敵なんだろう。
そんな気持ちにさせてくれる『9ボーダー』を毎週の楽しみに、私も七苗のように現実を必死に生き抜きたい。