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この記事に相応しいタイトルをつけよ。

 紫陽凛はホラーが苦手である。大々的に喧伝したことはないけれど、怪異・物の怪・人間の、主に「怖さ」を主題とした小説に「怖さ」を感じない。だからなんだと思ってしまう。

 彼女自身これは(一般の読者として)致命的な欠陥なのではないだろうかと思っているのだが、治療したところでホラーが書けるわけでもなし、ホラーが読めなくとも生きていけるし、この空前絶後のホラーブームに乗れないのも致し方ない。だが周りが声を揃えて「良い」と言うものの良さがわからないことは多少の寂しさを彼女の中に残すわけだ。

 彼女はジャンプスケアの勢いに慄き、グロテスクを通り越してギャグめいたスプラッタ描写にドン引きすることこそあれ、「静かに背後から迫ってくる影が実は呪いなんじゃないか」「今すれ違った爺さんが実は妖力で動く死体なんじゃないか」といった繊細な情緒に欠け、そうした場面を本の中に見つけ出す時に、自分の想像力の限界を自覚する。

 なんでこんなことになってしまったのだろうか……と彼女は考える。ホラーを読めない書けない面白がれないと三拍子揃って、一つの可能性のが潰れるのをみた時に、彼女はやっぱり考えざるを得ないのだ。

 以上は文章を書くためのリハビリで書かれたものである。

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