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椎名林檎『正しい街』

 酔った状態でこのnoteを書いているのだが、これを読み返した正気の私が羞恥でひっくり返らないことを祈るしかない。

 椎名林檎の『正しい街』を熱唱したくなった。理由はとくにない。ただ、この街は冬の匂いも正しくない、ここには知った川も知った海もない。見知らぬ盆地が広がっているだけで、私は切り離された私の根っこを思いながら川べりを歩いている。
 郷愁に近いものが私を支配している。でも私の故郷はとうのむかしに散逸して消えた。家族の営みが崩壊した瞬間から、私の帰るべき場所はなくなってしまったのだ。
 でも私は帰りたがっている。あの水の匂いのする故郷に帰りたがっている。そこには距離ぶんの距離を置いてしまった友がいて、なつかしい空があって、懐かしい夏があって。
 本当はこんなこと思ったってどうしようもないのに。

 居場所なんか自分で決めるものだ。本来人間は移動しながら群れで生活する生き物だったと聞く。私が遠くに嫁ぐのもまた一つの手段であって正当な営みだったはずだ。
 でも、私はいま「正しい街」を歌いたい。私を振ったあの男がいまどこで何をしているか、知己に聞くくらい、いいじゃないか。



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