プロ詐欺師のサツジン
戯曲にサロメって妖婦がいたように俺の目の前には沙羅という激烈ヤバい女がいて、俺の舌を引き抜いて網で炙って食いたいという。サロメだってヨハネの首は食わなかった。それに俺にとって話せなくなることは死ぬより辛いことなのでそれなら殺してくれ頼むと沙羅に話すのだが、沙羅は「環くんに会えないのはだめ。でも環くんが他の人と話すのもダメ。それがあたしの愛なわけ」と真っ当そうながら全て狂った発言をする。あんまり酷いので、俺は隙を見て沙羅の心臓をナイフで刺して殺す。
殺した。
さてどうするか、死んだ沙羅の足首をひっ掴みマンションから放り出す事は簡単だがサツに見つかって俺の生業がばれるのもヤバい。俺は詐欺の片棒を担いでそれで生計を立てるプロ詐欺師だ。プロ詐欺師が詐欺以外で捕まるなんて言語道断、あってはならない。そのために、沙羅の死体には消えてもらう。
俺はホームセンターへ向かう。三十分後、俺はノコギリ片手に沙羅と向き合った。
沙羅は異常に柔らかくて切りやすかった。プロ詐欺師としての経歴の中で殺しだけはしなかったので、人間がこんなに切りやすく柔らかいものなのかは俺には分からなかった。血も思ったほど出なかった。舌を抜くより流血が少ないかもしれない。沙羅を綺麗に部位ごとに切り分けてゴミ袋に入れたところで、無機質なインターホンが鳴る。
俺は肩をそびやかし、ノコギリをガタンと放り捨てる。誰だ? サツだとしたら? 速すぎる。まだ殺して一時間も経っていない。冷や汗が伝いおち、手が震え出す。非常にコンパクトにされた沙羅を見る。現状は変わらない。
どれもこれも俺の舌を引き抜こうとした沙羅のせいだ。俺はマンションの窓を開け放ち、八階から飛び降り──ようとしたが、数秒足りなかった。銀色の触手が俺の腰を捕らえた。
「我々は宇宙警察です。貴方をサツジンの現行犯で逮捕します」
(つづく)