人聾ゲーム ―序章―
「犯人はこの中にいる」
推理小説でさんざん目にした台詞が、まさか現実に言われるとは思わなかった。夢であって欲しい。しかし紛うことなき現実である。メンバーの1人が何者かに殺されているらしき状況があり、現場の血の匂いが鼻腔にまだこびりついている。
男女複数人数集まったグループの中で突如放たれたその衝撃は、誰もが目に動揺の色が走った。
僕は、冷静に状況を把握している自分に若干嫌気を感じながらも、不審な点がないか周囲の表情を観察した。
…駄目だ。どれも本当に怯えているように見える。犯人は演技も上手いだろう。そう簡単にボロを出さない。残念ながら解決編に突入しそうもない。
僕はこの経緯をもう一度振り返ることにした。
続く
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