麻雀との出逢い④

心臓の鼓動が激しくなる。

初めてフリー雀荘に一人で行くのは、死ぬほど怖かった。

雀荘へ続く階段を昇る足が震えていた。

勇気を振り絞り雀荘の扉を開ける。

「チャリンチャリンチャリン~」とドアに付いている鈴が鳴ると、打っている人たちの視線が一気にこちらに集まった。

全員メチャクチャ強そうに見えた。

俺は、これからこんな人達と打たなければならないのかと思うと、即帰りたい気分だった。

「いらっしゃいませ、新規さんですか?」と気さくな店員さんが話しかけてくれた。

空いている雀卓に案内されると、お店のルールを丁寧に教えてくれた。

「じゃあ、空きがでるまで少しお待ちください」

「は、はい」

待っている間に、俺はもう一度スマホで点数計算表を見て復習した。ちゃんと覚えてきたし大丈夫だと、自分に言い聞かせる。

そして

「怪太さん、こちらへどうぞ!」

遂に来てしまった。

心臓が飛び出そうになった。

緊張で体がガタガタしてくる。

席に座り、あいさつをする。みんなあまりフレンドリーな感じには見えなかった。

怖い。

配牌が卓から上がり理牌をする手が震えていた。

さらに身内セットとは違い、ツモって来てから捨てるまでがマジで早かった。

その速度感や雰囲気に俺は完全に飲まれてた。

その日は、二半荘だけやってそそくさと撤退したのだが、なんとトップを取ることが出来、プラス収支で帰ることが出来た。

それでも、あがった時の点数計算はあれだけ勉強してきたのに、緊張で頭が真っ白になり全く出来なくて周りの方に教えてもらったりと、勉強の成果は出せなかったし、一度も鳴くことすら出来なかった。

勝った喜びは皆無で、ただひたすらに怖かった。俺のようなひよっこが来る場所ではないことだけは、心に刻まれた。

二度とフリーなんてこない。そう誓って俺のフリーデビュー戦は終わり、それから二年ほどはリアル麻雀からは遠ざかったのだ。

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