麻雀との出逢い⑦
予選四回戦、ここでトップを取れば決勝戦に勝ち上がれる俺とUの戦いはオーラスまでもつれた。
僅差のトップ目だった俺は、副露を用いて聴牌までたどり着いた。
「リーチ!」
ラス親がリーチ棒を投げる。
ここで和了ればファイナリスト、放銃すれば全てが終わる。
緊張で息が詰まった。
でも俺は勝てると信じていた。
覚悟を決めてリーチに対し真っ向から向かっていく。
「ロン!」
親からアガリ牌を打ち取り、その瞬間に決勝戦へと進むことがほぼ決定した。
全ての予選が終了すると総合ポイントの発表になった。発表は32位から順番にされる。
俺が決勝戦に進めるとしたらギリギリ4位に滑り込むしかない。
「6位は◯◯さんです!」
そして
「5位は…」
ここで名前を呼ばれたら決勝には進めない。
「◯◯さんです!」
呼ばれたの別の人の名前だった。
残った。
「4位は怪太さんです!」
嬉しさが込み上げた。まさか俺が決勝戦へ進出出来るなんて思わなかった。
間違いなくこの中で一番弱いのは、俺だったと思う。でもこの日の俺には運が味方してくれていた。
決勝戦では、立ち見のギャラリーが卓を囲みこの中で打つ。そして各々からヒシヒシと絶対に勝つという意思がオーラのように漂っていた。
至福の時間だった。
俺は東発で満貫を和了るなど幸先の良い出だしを決めるも、最後はあと一歩及ばず準優勝という、自分の力量を越えた成績を残した。
麻雀を始めてここまで、悔しいことばかりの麻雀人生だった。
職場のセット麻雀でさえ一度も勝つことが出来なかった。フリーデビューするも、場の雰囲気に飲まれて怖じ気づいたこともあった。麻雀の師匠である妻形さんには、怪太くんにフリーは絶対に無理と一笑された。
でも俺は、こんな麻雀強者の集まる大会で準優勝することが出来た。もちろん運が良かったというのは大いにある。
それでも俺は誇らしい気分だった。
この時に賞金の入っていた袋は、今も大切に持っている。
そして、この準優勝という称号が、俺の麻雀の力を底上げしてくれる転機へ繋がっていった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?