麻雀との出逢い⑤
フリーデビューから二年の間、雀荘には行かなかったが、決して麻雀熱が冷めたわけではない。
俺は主にネト麻専門で打ち続けていた。
ネト麻は、相手が見えないしチョンボもなければ、点数計算も自動でしてくれるので、対人関係のストレスがなくて気軽に出来る。
ネト麻の世界で腕を磨いて、高い段位を目指すことにした。
それでも、心の片隅にはリアル麻雀をやりたい願望は燻っていた。
でも、もうフリーは恐ろしくて無理。
話しは変わって仕事の方は、転職後にトントン拍子で出世して順風満帆だった。
そんなある日に、新入社員が一人入った。3つ年下のUという長身やせ形アンガールズ体型の男だ。
そして、この男が俺の麻雀ライフに大きな転機をもたらすことになる。
会社から帰り道、俺とUは電車通勤の為に駅に向かって歩いていた。
「怪太さん、俺はちょっと遊んでくるので、お疲れさまでした」
「なに?遊びって?パチンコ?」
「いや、麻雀っす」
「ま、、麻雀??」
「はい」
「ひとりで?フリー?」
「あ、そうです」
「俺も、連れてってくれる?」
おもわず、俺は言ってしまった。
「あ、全然いいですけど」
「同卓で出来るかな?」
「頼めば出来るんじゃないですかね」
Uはどうやら雀荘の常連のようだった。
そして、俺は二年前にフリーデビューした、あの店にもう一度挑戦することになった。
「チャンリンチャリンチャリン」
怖い、緊張する。
でも、Uがいるからあの時ほどの恐怖感はない。
「Uさんと同じ会社の人?」と店員さん。
「会社の先輩です」とU。
この一言で、長い間この店での俺の呼び名は「先輩」になった。
Uと同卓することで、緊張なども取れて楽しく麻雀が打てた。
こんなに楽しくリアル麻雀が打てたのは、前の職場でやっていた頃以来だった。
それからというもの、俺は週に3~5回はUにくっついていき雀荘に通うようになっていった。
麻雀楽しい。
成績は店でもワーストに入るくらい負けまくって弱かった。弱いけど楽しんで打つ俺は、少しずつ店にも客にも認知され始めた。
「先輩いらっしゃませ~」
「あ、先輩今日も来てるんだ」
俺は、明るく楽しく打つ雑魚キャラだと受け入れられてきた。
そして徐々にひとりでも、打ちに行けるようになってきた。
ただし、雀力の方は最底辺で負け続けた。
それでも、この時が一番楽しかった。
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