
3Dフードプリンターと宇宙
まとめ
・3Dプリンターとは3次元の設計図から材料の層を積み重ねて、硬化・焼結などを用いて造形する機械
・日本人が考え付いたのが最初かも
・宇宙での活用性大
-------------------------------------------------------------------------------------------------
3Dプリンターというワードを聞くようになってから早数年。
そもそもどういったものなのか、それが食とどう繋がるのか素人が書かせていただきました。日本人が最初に開発していたなど知らないことばかりでした。
Qそもそも3Dプリンターって何
3Dプリンターとは3次元の設計図から材料の層を積み重ねて、硬化・焼結などを用いて造形する機械のことを言います。
3Dプリンターを利用したモノづくりをAdditive Manufacturing=AM(付加製造)と言い、AM の利用方法はRapid Prototyping(高速試作)、Direct Digital Manufacturing(DDM)の 2 つにあると言われています。
前者は造形物の精度や製造速度などは必ずしも高くないため、安価な 3D プリンターも行うことが可能です。プロトタイプを作ることでビジネススピードを早めることも実現できます。
後者については治具、金型、最終製品を AM で製造することです。機会自体の性能は高いものが求められるため、この分野で用いられる3Dプリンターの価格も高価となります。
3Dプリンターの特徴は、①数量効果に囚われない経済性②複雑な製品形状でも変わらない生産性③デジタル在庫という強靭性、と言われています。
まず①については、通常であれば数量が少ない場合は生産費用が増加しますが、3Dプリンターであれば数に関係なく一定の生産費用で済む可能性が高くなります。
②については、3Dプラインターで可能となる、もしくは独自の立体構造を作ることの可能性が上がります。最後は3 次元のデジタル設計図を使用することで持ち運びやバックアップなど高い利便性があります。それによって、製造コストがフラット化、中央集中型インフラが不要となり、分散型の経済産業モデルへ繋がっていくことが予想されます。
(苦手なトマトを克服しつつある今日この頃)
●3Dプリンタの歴史
3Dプリンターを考え付いたのは小玉秀男さんという日本人でした。1980年のことです。新聞の版下を液体の光硬化性樹脂で作られている状況をみたことから発想を得て、マスクを変えつつ紫外線を露光する工程を繰り返すことによって光造形立体模型を作ることができると閃き、発明されたとのことです。しかしながら、国内で実用化に興味を持つ企業が現れなかったことから忘れ去れてしまいました。
丁度小玉さんの特許が終了したその頃、1987年にアメリカのチャック・ハル氏が3Dプリンターの基本特許を取得し、その後、世界最大の3Dプリンターの会社である3D Systemsを創業することになります。
当初は3Dプリンターの機械が1億円もの資金を要する技術でしたが、技術の進歩と特許失効とともに安価になり、2009年頃から個人用の3Dプリンタが普及するようになってきました。
そして、2012年に3D Systemsが個人用3DプリンタCubeを発売、2013年にオバマ大統領の「一般教書演説」や元Wired編集長であるクリス・アンダーソン氏の本で取り上げられ爆発的に広まり現在に至ります。
●3Dプリンタ*食事*宇宙=宇宙3Dフードプリンタ
国内では水産大学校での未利用食材の活用などによるフードロス解決、個人のデータに基づいた食事提供などによる個別化食事によるwell-beingの向上、宇宙などの特殊な環境での食料供給といった多方面において、3Dフードプリンタの事業化に向けた動きがあります。大阪大学、米マサチューセッツ工科大学(MIT)、英サセックス大学による研究チームでは内部形状を変更した同じカロリーの食品(研究ではクッキー)をいくつか作成し、食べ比べて満腹感の変化を調べたものもあります。
柔軟性があり、再現性に富み、個別対応可能で、オンデマンドな点が3Dフードプリンタの特徴です。具体的な事例でいうと、栄養価満点の見たは普通食に見える嚥下食の作成、ムスリムが食べられる「とんかつ」 、匠の技や文化をデータ化して保存する、生活習慣病がある場合はその人にあった栄養バランスを提供する、調理の難しい場所(災害、宇宙、船上、戦場等)でもプロやおふくろの味が食べられるように、働き手不足の解消、食ロスや環境問題への貢献、新規のコミュニケーション確立などが考えられています。
宇宙では、
①現地で食材を調達できる地産地消②栄養素やエネルギーを効率的に摂取する③限られた資源で調理する省力化・省人化④排泄物も活用する物質循環⑤少ない食材で美味しく楽しく食べるQOL向上
、がポイントです。
この中で3Dフードプリンタを使用することで、高度にパーソナライズされた、無駄の少ない、プロもしくは家庭の味が自動でできる可能性があります。
また非日常を演出するようなエンタメ性の高い料理の提供も可能となるかもしれません。
今後ますます楽しみな分野です。
番外編QQ 3Dプリンタの材料って何があるの❓
紙、金属、樹脂が代表的です。他にはモルタル、石膏、そして今回の食事に関連した細胞やタンパク質などもあります。
【参考文献、引用文献】
・J. Technology and Education, Vol.21, No.2, pp.53-62 (2014)
・2020年の日本産業を読み解く10のキーワード 株式会社東レ経営研究所 2020.1・2 経営センサー
・政策Open Lab/Food Tech( 3Dフードプリンタ)チーム 3Dフードプリンタの影響と可能性について 19年7月24日 FCP若手フォーラム
・SPACE FOODSPHERE ウェブサイト
・Ying-Ju Lin*, Parinya Punpongsanon*, Xin Wen, Daisuke Iwai, Kosuke Sato, Marianna Obrist, Stefanie Mueller. [* equal contribution] FoodFab: Creating Food Perception Illusions using Food 3D Printing In Proceedings of CHI 2020.