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未来からの招待状
「朱実(あけみ)さん、ポストに手紙が届いています」
「ロボくんありがとう」
ロボくんは、この家のAIセキリュティシステムだ。私たち家族の中で誰よりもこの家に詳しい。ポストに届く物の形状や宛名の判別までしてくれる。
手紙の送り主の名前には見覚えがない。にもかかわらず、どうも他人じゃない気がして開けてしまった。
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ーー
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「お母さ…あっごめんなさい。白石朱実さんですよね?初めまして。私はあなたの娘の白石咲良(しらいし さくら)です」
え?
「驚かせてごめんなさい」
「今日は2150年6月20日。若い頃のお母さんに1度会いたくて、今開発中の手紙転送システムの試験運用をしてみたの。無事呼び寄せることが出来て本当に良かった。ありがとうお母さん」
今年2050年に20歳になったばかりの私。目の前にいる女性は私の娘と名乗り、5月には50歳になるという。
いやいやいやそんなまさか。タイムマシンでも発明されなきゃ。
頭上に所狭しと走っていた電線は消え、代わりに大量の風車が音も立てず回っている。目に見える建物は全て1階部分が柱だけのピロティ構造。目の前の女性の二の腕には文字が浮かび上がっている。
やっぱり、どう考えてもここは私がいる時代ではない。本当に未来に来てしまったのか。
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それ何?
「あこれ?これは"SITS"(シット)。皮膚植え込み型シート、Skin implantable Sheetの頭文字ね。産まれてすぐに二の腕の皮膚下に埋め込まれる個人識別装置で…ってお母さんが若い頃にはなかったのね。ほら今お母さんが手首に巻いているそれと似たような物よ。」
確かにこれは時計や通信や個人番号による決済機能がついた端末だけど。
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いやそれよりも
「本当にただお母さんに会いたくなっただけ。」
「今から10年前、110歳で亡くなったお母さんは、生前もし若い頃の自分に会えるのなら、今の生活と娘がいることを教えてあげたいって事ある毎に言ってた。子供が欲しいが身体の変化が怖いと悩んでいた自分にも、"赤ちゃん培養技術"で子供を授かった事を伝えて安心させてあげたいって。」
「そろそろ時間切れ。じゃあね」
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ーー
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あちょっと待っ
「朱実さんどうかされましたか」「う、ううん。なんでもない」今のは夢か現実か。
「未来のことは私にも分かりませんが道を切り開いていくのは朱実さん、あなた自身です。私どこまでもお供しますよ」「そっか、そうだよね。ありがとうロボくん」
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「プログラム135完了」
「ロボくん何か言った?」「いいえ。気のせいでしょう」
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続編かサイドストーリーのつもりのこちらも合わせて読んでいただけると、また違った印象になるかもしれません。
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