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村上RADIOへのリクエスト通る

1月末の村上RADIOは、柴田元幸さんとの公開録音の会だった。
僕はこれの一般参加枠に応募して外れた。ラジオを聴いてみると村上春樹と応募者との絡みはなく、なんだ、それなら別に外れてもよかったと思いつつ、やはりそこに居合わせたかったと思う。

応募するときに曲のリクエストを書く欄があった。この回のテーマは英語のポップソング。それを柴田元幸さんと一緒に和訳していこうという回だった。

毎日音楽を聴いているのに、1曲を選ぶとなると困るもんだ。僕は数分考えて、突然、ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」を思いついた。こういうのは直感だと思い、リクエスト欄にそう書いて応募した。

僕はラジオを「radico」のタイムフリーで聴く。村上RADIOは放送後5日間くらい公開されている。
画面に飛ぶと、下の方に曲のリストが並んでいる。
1:30  〇〇    5:10 〇〇 という風に、そこをタップすると曲が流れる手前までジャンプできる。

今回の曲のリストの中に「25:00 アローン・アゲイン」があったとき、ドキッとした。アーティスト名を見ても、ちゃんとギルバート・オサリバンである。

村上春樹に認知された、と喜んだ。これは確か金曜の朝だった。
その時はあえて「アローン・アゲイン」の部分まで聞かず、帰ってきてからのお楽しみにすることにした。
1からラジオを聴いてみると、村上春樹の選曲、柴田元幸の選曲、というように分かれているらしかった。
その時、僕はこう思っていた。
「次のアローン・アゲインは、リスナーからのリクエストです。ラジオネーム、〇〇さん、26歳、会社員……僕もね、この曲はわりに好きなんですね。それにしても今の26歳もこういう曲聴くんですね……」
少しだけでも取り上げてくれると思っていた。

しかし! アローン・アゲインは「柴田元幸さんの選曲」として紹介された。それもリクエストなど一言も言及せず、柴田さんが思いついたような口ぶりで。

僕は色々考えた。
まずこう。数ある洋楽の中からギルバート・オサリバンを選ぶはずが無い。柴田さんは僕のリクエストを見て「あ、確かにこういうのあったな」と思い、採用した。

次にこう。柴田さんは僕のリクエストを見る前から、ギルバート・オサリバンを流す予定だった……

次。僕以外のリスナーで、もう1人同じ曲をリクエストした。これは考えにくい。それならそうと一言、柴田さんはいうはずだ。「これが何故か複数人からリクエストされまして……」

多分、村上春樹と柴田元幸が打ち合わせでリクエストに目を通しているんだろう。2人も自分で考えるより、リスナーからのアイデアを借りる方が気楽にできるはずだ。とすると僕のリクエストはやはり2人の目に入っている。

だから何?と思うだろう。ただ、僕は好きな作家、翻訳家とのささやかな共通点が欲しかった。一言だけでも彼らの口から「ギルバード・オサリバンを選んだリスナーの人物像」を聴きたかったのだ……

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