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コンパクトシティでお酒は売れる

大都市の人間は、電車などの公共交通があるから安心して飲みに行ける。それが当たり前の環境で私は育った。学生のうちに自動車免許をとったけど、ここ10年以上、一度も運転していない。
駅を中心に街が広がり、そこを大勢の人が行き交い、ほぼ全員が電車を移動手段として使っている。街も店も、歩行者を相手にしているからぎゅっと詰まっていて使いやすい。ある意味、大都市は超巨大なコンパクトシティの集合体のようなものだ。

地方へ行く場合も、基本的には首都圏で飲み歩くのと同じ感覚だ。新幹線を降りて、駅前繁華街や旧市街で飲んで、そこにあるホテルに泊まる。

中心街を見て、こんなに衰退してしまったのかと驚くけれど、地元の人はそこへ来ないだけで、ロードサイドのショッピングモールや駐車場のあるチェーン飲食店を利用していて、夕方になると渋滞だって発生している。もちろん、自動車通勤では仕事帰りに居酒屋へ寄れない。飲むとなったら飲み代くらい費用がかかる運転代行を使うなどの一大イベントになってしまう。地方の人々の暮らしと、私の暮らしは交差しない。

地方へ行けば行くほど、電車移動主体で飲み歩くというスタイルのほうが少数派であると気づく。酒場めぐりという趣味が、都市型の遊びなのだということも…。

都市部と地方、お酒を飲むシーンがこれほどにも違うのか。考えてみたら当たり前なのだけど「それはお酒の消費量も減るよね」と思ってしまう。

外で飲むことが少ない地方都市郊外に暮らす人のほうが、案外、地元の酒を飲んでいないのではないだろうか。

中心街に名店があれば、交流が生まれる

さて、話は少し変わり、酒場はコト消費だから強いし、人を惹きつけるという話。

津山中心街 焼肉千恵 遠方から千恵目当てで飲みに来る人も多いという

郊外ショッピングモールとECで壊滅的になった駅前・中心街の商店街でも、酒場は意外と元気だ。外食、とりわけ居酒屋は他で代用できないからだと思う。地元の人が集うカウンターには、都市型の観光客もやってきて、お役所が作った「観光センター」よりもよっぽど濃厚な交流が行われている。

お酒は全国から取り寄せられるようになっても、わざわざその地まで飲みに行くのは、人(料理人や常連)×食×酒が醸し出すムードが心地いいからだ。

飲みに行きたくなる名店ができれば、そこを中心に街が元気になる。別に、有名料理人を連れてきたり、豪華なハコモノを用意したりといったバブル時代のやり方ではなくて、もともとあった良いお店にスポットライトを当てるだけで十分。むしろ、狙って作られた名店よりも、自然と熟成してきた老舗のほうが飽きられずに末永く愛されるはずだ。

近年、やっと地方都市も中心街の構造を自動車中心から、歩行者中心のまちづくりに舵を切っているが、どんどんやってほしい。

具体的には・・・

トランジットモール化した姫路大手前通り

京都は地方ではないものの一例として、四条通の歩道を拡幅し車線を1/2にした。タクシードライバーは文句がでるかも知れないけれど、実際街を歩く側としては快適で楽しい。姫路駅から姫路城にかけての目抜き通りもトランジットモール化された。定量的な数字は調べていないものの、駅前の飲み屋街の店主や常連さんには好評だ。仙台の定禅寺通、三重の津駅東口通り、新潟の東大通りでも検討・検証が行われている。

コンパクトシティで、街の個性を守れば消費も伸びる

コンパクトシティで最も成功した例は、富山市だ。人口増加、地価上昇などがよく言われているが、飲み屋街も10年前と比べて肌感覚ながら賑いを増しているように感じる。なにより、かつて郊外ロードサイド・全国チェーン生活をしていた人が、大都市の公共交通主体の生活スタイルに変わり、中心街の魅力を再発見しているように感じた。(飲み屋のカウンターでの会話から)

いま、宇都宮もライトレール(LRT)効果でコンパクトシティ化が急ピッチに進行中だ。JR宇都宮駅前・駅ナカを中心に飲食店が増加傾向で、賑いが明らかに変わってきいる。ただし、宇都宮の中心街は、県庁、東武宇都宮駅がある一帯なので、早くLRTを延伸しないと駅前に一極集中してしまいそうだ。

自動車中心の暮らしから、週一日でも公共交通移動の暮らしに変われば、街の個性が強まる。地元の人が飲食店を起業し、老舗の店も儲かる家業に転換することで世代交代し、より長く親しまれ街を代表する名店に育っていく。

そこでは、地元食材や地元お酒が売れる。
交流を求めて観光客も増加し、地域の注目度が高まるだろう。

酒場と地方活性化は、意外なほど身近な関係なのだと思う。

地元の人が集まる酒場にある、地元のお酒

自動車を利用せずに楽しめるまちづくりは、ただのインフラ整備に留まらず、中心街には魅力的なコンテンツがあるということを広めることも重要だ。風前の灯火状態である中心地の飲食店街を支えてほしいと強く思う。

以上、東北を3日間旅して感じた、コンパクトシティと酒の関係、
おしまい。

参考記事

コンパクトシティの行方~都市の消失をとめられるのか・様々な視点から見たコンパクトシティ~
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jares/33/3/33_4/_pdf


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