メニエール病とは?
メニエール病は、内耳の疾患であり、迷路内に内リンパ水腫が生じることによって発症します。内耳は平衡感覚や聴覚をつかさどる重要な部位であり、内リンパの異常がこれらの機能に影響を与えます。メニエール病の原因は完全には解明されておらず、自律神経の異常やアレルギー、解剖学的な異常、感染、代謝異常、栄養不良、ストレス、さらにはウイルス感染など、多岐にわたる仮説が提唱されています。その一方で、内リンパ水腫の形成には、内リンパの分泌や再吸収を担う組織の機能障害が関与していると考えられています。
主な症状
メニエール病の特徴的な症状は、いわゆる「メニエールの三徴候」と呼ばれる以下の3つです。
1.回転性めまい
めまいは突発的に生じ、回転するような感覚が30分から数時間続きます。この発作中には、自律神経症状(悪心、嘔吐、冷汗、頻尿など)が伴うこともあります。
2.感音難聴
難聴は初期には軽度ですが、発作を繰り返すことで徐々に悪化し、高度な難聴に進行する場合もあります。
3.金属性の耳鳴
鋭く高い音が聞こえる耳鳴りが特徴で、これも病気の進行に伴い増悪することがあります。
また、一部の患者では耳の詰まったような感覚(耳閉感)が報告されることもあります。
診断
メニエール病の診断には、次のような基準が用いられます。
①メニエール病確実例
難聴や耳鳴り、耳閉感などの聴覚症状を伴うめまい発作を繰り返す場合。
②メニエール病非定型例
以下の2つのタイプに分けられます。
1.蝸牛型:聴覚症状のみが増悪と軽快を繰り返し、めまい発作を伴わない。
2.前庭型:繰り返すめまい発作が特徴で、聴覚症状がある場合も固定性で発作中に変動しない。
いずれの場合も、他の原因疾患(外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍など)を除外することが必要です。
検査
聴覚検査
初期には低音障害型の難聴がみられることが多く、病状が進行すると高度難聴へと進展します。また、内耳性の難聴の特徴として「補充現象陽性」が認められることがあります。
平衡機能検査
発作中には強い平衡失調があり、直立姿勢を保つのが困難になることがあります。この時、眼振(眼球の不随意な動き)の方向が患側を向いているのも特徴的です。
治療法
薬物療法
メニエール病の治療では、薬物療法が第一選択とされています。めまい発作を緩和し、自律神経症状を軽減するために以下の薬が使用されます。
・ベタヒスチン(メリスロン):内耳の血流を改善する薬。
・利尿薬:内リンパ水腫を軽減させる。
・ビタミン剤・末梢血流改善薬:内耳の神経機能を活性化させる。
発作が強い場合には、輸液や精神安定薬も有効とされます。
手術療法
薬物療法で効果が得られない場合や、聴力の悪化が進行している場合には、「内リンパ嚢減負荷術」などの外科的手法が検討されます。
看護ケア
メニエール病の看護においては、患者の不安を和らげ、生活の質を維持することが重要です。
発作時のケア
・不安の軽減のため、「命にかかわる病気ではない」と説明します。
・安静を保つために静かな環境を提供し、患者が楽な体位をとれるようにします。
・暗い部屋での休養が症状の軽減に役立つ場合もあります。
日常生活での指導
・規則正しい生活リズムの確立を促します。
・ストレスや疲労の蓄積を避けることを指導します。
・アルコールやカフェイン、喫煙などの刺激物を控えるように助言します。
治療継続の重要性
症状が改善したとしても薬物療法を中断しないように指導し、定期的な受診を促します。
メニエール病は、生活の質に大きな影響を与える疾患ですが、適切な治療とケアによって症状をコントロールすることが可能です。患者への適切な説明と支援を通じて、発作への不安を軽減し、日常生活の快適さを保つことが重要です。