漢方薬の有害事象について
1.漢方薬の特性と有害事象
漢方薬は成分が穏やかで一般的に副作用が少ないとされていますが、注意が必要な場合もあります。
・特定の生薬の用量や対象者によっては有害事象が発生することがあります。
・漢方薬同士や西洋薬との併用により、相互作用で副作用が強まることがあります。
2.主な有害事象と生薬別の注意点
3.代表的な副作用の詳細
⑴偽アルドステロン症(カンゾウによる)
・初期症状:手足のこわばり、むくみ、高血圧。進行すると筋力低下や横紋筋融解症を引き起こすことがあります。
・原因:グリチルリチン酸の代謝物が腎臓の酵素を阻害し、コルチゾール作用が増強されるため。
・特に、カンゾウを含む複数の漢方薬の併用や長期服用でリスクが高まります。
⑵間質性肺炎(小柴胡湯による)
・小柴胡湯などに含まれる生薬「オウゴン」が関与している可能性があります。
・特にインターフェロン製剤との併用や肝疾患患者ではリスクが高く、投与は禁忌とされています。
4.注意すべき薬の相互作用
⑴漢方薬同士の併用
・構成生薬が重複し、副作用が増強する場合があります。カンゾウやマオウを含む薬には特に注意。
⑵漢方薬と西洋薬の併用例
・小柴胡湯+インターフェロン製剤:間質性肺炎を引き起こすため併用禁止。
・カンゾウ含有製剤+K排泄性利尿薬(ループ・チアジド系):低カリウム血症リスク増加。
・カンゾウ含有製剤+グリチルリチン製剤:偽アルドステロン症の発症。
・マオウ含有製剤+交感神経刺激薬:マオウの副作用(血圧上昇など)が強まる。
5.予防と対応
・個別の体質や併用薬を確認し、過量投与や長期服用を避ける。
・偽アルドステロン症や間質性肺炎が疑われる場合は速やかに医療機関で検査を受ける(血清カリウムやレニン・アルドステロン濃度の確認など)。
・投与前に相互作用の可能性や禁忌を十分確認する。
漢方薬を安全に利用するためには、適切な知識と注意が重要です。