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腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis)について

腰部脊柱管狭窄症とは
腰部脊柱管狭窄症は、腰の部分で脊柱管が狭くなり、神経や脊髄の馬尾が圧迫されて起こる病気です。主に中高年に多く、50歳以上の有病率は10%を超え、腰の第4・5椎間でよく発生します。加齢による変形(脊椎すべり症や変形性脊椎症)が原因となることが多いです。
 
症状
腰部脊柱管狭窄症の主な症状は次の通りです。
・しびれ・疼痛:殿部から下肢にかけてしびれや痛みを感じ、徐々に進行します。
・神経性間欠跛行:しばらく歩くと痛みやしびれが悪化し、休むと回復します。特に体を前屈させると症状が和らぎやすいのが特徴です。
・重度の症状:進行すると膀胱や直腸の機能障害(尿意切迫感や残尿感)を引き起こし、会陰部の異常感覚や性機能障害が現れることもあります。
 
検査と診断
・画像診断:X線、CT、MRIなどで脊柱管の狭窄の状態を確認します。ただし、画像での狭窄が症状と必ずしも一致しないため、病歴や神経学的所見も併せて診断します。
・鑑別診断:間欠跛行には血管性と神経性があり、神経性では自転車に乗る姿勢で症状が軽減するのが特徴です。
 
治療方法
腰部脊柱管狭窄症の治療にはまず保存療法を行い、効果がない場合は手術療法が検討されます。
 
保存療法
・薬物療法:NSAIDs(抗炎症薬)、ビタミンB12製剤、筋弛緩薬などを使用します。
・物理療法:温熱療法や運動療法により、筋肉をほぐして痛みを和らげます。
・神経ブロック:神経根ブロックや硬膜外ブロックが行われることがあります。
・運動療法:腹筋や背筋、大殿筋などを強化する腰痛体操も有効です。
 
手術療法
・除圧術:椎弓切除術や開窓術で、圧迫を取り除きます。
・固定術:インストゥルメンテーション手術などで骨を固定し、安定性を保ちます。
 
ポイント
特に馬尾症状がある場合には、症状が自然軽快しにくく、保存療法の効果が限られるため、早急な手術が必要です。間欠跛行のある患者は多くの場合、整形外科で治療を行いますが、血管性の場合は血管外科が担当することが一般的です。
 
 
※間欠跛行の分類と鑑別方法
間欠跛行は、歩行中に足や腰に痛みやしびれが出て、休むと回復する症状です。この間欠跛行には、神経性間欠跛行と血管性間欠跛行の2種類があります。鑑別には、症状の特徴や足背動脈の触診が有効です。
 
神経性間欠跛行
・原因:脊髄の障害や腰部脊柱管狭窄症による神経圧迫
・症状:歩行中に痛みやしびれが出ますが、前屈すると症状が軽減されます(自転車では前傾姿勢のため症状が出にくい)。
・足背動脈:触知良好(血流に問題がないため脈は正常に触れます)。
・診療科:整形外科で診察します。
 
血管性間欠跛行
・原因:慢性動脈閉塞(例:閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎)
・症状:歩行中に痛みやしびれが出ますが、歩行を止めると症状が回復します。
・足背動脈:触知不良(動脈の閉塞による血流低下で脈が弱くなる)。
・診療科:心臓血管外科で診察します。
 
鑑別のポイント:自転車に乗っているときの姿勢が重要です。神経性では前傾姿勢で症状が緩和され、血管性では症状が変わりません。
 
 
※馬尾症状(馬尾神経が圧迫されることで起こる症状)
膀胱直腸障害
・尿意切迫感、残尿感があり、排尿・排便のコントロールが難しくなります。
性機能不全
・異常勃起(間欠性陰茎勃起:性的刺激や興奮がないにもかかわらず、繰り返し勃起が起こる)など、性機能に問題が生じます。
異常感覚
・両下肢、殿部、会陰部に広範囲のしびれ、灼熱感、脱力感、ほてりなどの異常が現れます。
筋力低下
・ミオトームに一致して筋力が低下し、動作が困難になることがあります。
アキレス腱反射の減弱または消失
・特に第5腰神経以下が影響を受ける場合、アキレス腱反射が弱くなるか、消失することがあります。
 
これらの症状は、馬尾神経が圧迫されると生じ、症状が進行すると日常生活に大きな支障をきたします。


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