蕁麻疹(Urticaria)とは?
蕁麻疹は、一過性で限局的な皮膚の浮腫(膨疹)が発生し、紅斑を伴う疾患です。多くの場合、数時間以内に消退する一時的な症状ですが、慢性的に続くケースもあります。
蕁麻疹のメカニズム
蕁麻疹は、皮膚のマスト細胞から放出されるヒスタミンなどの化学物質が原因で起こります。これにより以下の変化が生じます。
・毛細血管の拡張による紅斑。
・血漿成分の漏出による浮腫(膨疹)。
・末梢神経が刺激されて生じる痒み。
蕁麻疹は一般にⅠ型アレルギー反応が関与しているとされますが、実際にはアレルギー以外の要因(寒冷、日光、ストレス、感染など)によるマスト細胞の活性化も大きな要因です。
蕁麻疹の種類と原因
蕁麻疹は大きく以下のように分類されます。
1.特発性蕁麻疹
原因が特定できず、誘因なしに膨疹がほぼ毎日出現します。
・急性:発症後6週間以内。
・慢性:6週間以上続く場合。
2.刺激誘発型蕁麻疹
特定の刺激(物理的刺激、寒冷、日光、発汗、食物、薬剤など)によって症状が出現します。原因を特定でき、刺激試験で誘発可能なことが特徴です。
3.血管性浮腫
限局的かつ深在性の浮腫で、特に眼瞼や口唇に多く発生します。痒みを伴わないことが多く、喉頭浮腫を伴う場合には緊急対応が必要です。
主な症状
蕁麻疹の症状は以下のような特徴があります。
・膨疹:紅斑と紅暈を伴い、多くの場合痒みを伴います。形状は円形や地図状などさまざまです。
・発疹の持続時間:30分〜2時間程度で自然消退し、24時間以内には完全に消失します。
・血管性浮腫:皮膚の深部に発生し、特に喉頭浮腫の場合は気道狭窄を引き起こす危険があります。
診断のポイント
診断には詳細な問診が重要です。特に症状の発生時間や頻度、環境、刺激の有無について確認します。また、刺激誘発型の場合、必要に応じて刺激試験を実施します。
治療方法
1.抗ヒスタミン薬の使用
蕁麻疹治療の第一選択薬は第二世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬です。特発性の場合は良好な反応を示し、症状消失後も一定期間の継続投与が推奨されます。
2.その他の治療法
・抗ヒスタミン薬で効果が不十分な場合:薬の増量や抗ロイコトリエン薬の追加。
・重症例や治療抵抗例:副腎皮質ステロイドや抗IgE抗体(オマリズマブ)を使用。
・妊婦への投与:必要最小限に留め、推奨薬(ロラタジン、セチリジン)を使用。
予後
一般的に蕁麻疹は予後が良好ですが、慢性の場合は数年以上症状が続くこともあります。特に血管性浮腫では喉頭浮腫による気道狭窄に注意が必要です。
蕁麻疹は一見すると軽症に見える場合でも、適切な対応が必要な疾患です。症状が繰り返す場合や治療に反応しない場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。