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あなたは光の中にいてね

 祈りに似た思いを密やかに向けて、自己満足な慰めでしかないことはわかっている。自分すら正しく充たされるかはわからないけれど。
 痛みばかりが鋭く刺してくるような幻はもう私を苦しめない。おとなになれば生き抜くために鈍く、世界を少しずつゆるせるようになった。私を覆うぬるい不透明な薄膜はうまく隠せているだろうか、子どもの頃をかなしみを、幼い感受性を。
 あなたに触れて、はじめて心と身体はひとつになった。世界は私を幾千に引き裂いてばらばらにするものだったから、心を伴った場所で深い呼吸ができた。あなたは私に触れて、息ができているだろうか。眠りに落ちて、その額から輪郭をなぞり、唇に指を置き、吐息を確かめては愛おしく思う。あなたは温かい、やさしい光の中でいてね。


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