無題

緩やかに時は流れた。
差し伸ばしても届かない光が眩くて、遠くでゆらめている。
何度も瞬きをした。
滲む涙が瞼を濡らして、光が乱反射する。

自ら絶ったものも、いつの間にか掌から溢れおちたものもあったけれど、その白い胞子のような記憶を柔い布に包んで、海の底に沈めた。せめて傷つかない場所で、眠っていてほしいというエゴイスティックな感情を押し込めた。

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