趣味のデータ分析046_子どもを持つということ⑫_未婚子なしというライフコース
045で、結婚と出産の関係が解体されていく可能性について触れた。今回は、ライフプラン、及び子なしという選択について、ライフコースの観点から再度光を当てていきたい。
ライフコース更新版
女性の描くライフコースについては、全体像は図1、2で、これは036でもご紹介した。
・理想で非婚就業やDINKsが伸びて、合計20%近くになっている
・予定で未婚就業が一位に躍り出ている
など、これだけでも2021年は非常に興味深い動きになっているのだが、年齢別の詳細は、データが公表されておらず、2021年のデータは反映できていなかった。先日出生動向基本調査の最新版が出て、年齢別も2021年時点に更新できるようになったので、年齢別の理想のライフプランから見ていこう。
2021年時点の理想のライフコースの特徴は、上述の非婚就業・DINKsの増加だが、これは全年齢的な現象のようだ。30~34歳では、非婚就業を理想とする者が15%と、全7つの選択肢の内なんと上位3位にまで食い込んだが、それ以外の年齢でも10%超、専業主婦をすぐにでもまくれる位置についている。結婚適齢期女性の10%が、そもそも結婚しないことを理想と掲げるようになった事態は、もう少し注目されても良いように思う。並行して、DINKsについても、年齢を追うごとに上昇している。
割りを食った(?)選択肢は、元々減少傾向にある専業主婦と、2021年は再就職である。再就職は依然全年齢で2位であるが、両立が維持上昇傾向にあり、未婚就業やDINKsの伸びを踏まえると、「出産してもキャリアの中断はしたくない」という思いだけでなく「キャリアの中断になるなら出産しない」という思いすら見えてくるのは、穿ち過ぎだろうか。
次に、予定のライフコースについて見てみよう。
予定のライフコースの最大の注目点は、やはり未婚就業が全体一位となったことだが、もともと1位だった30~34歳だけでなく、25~29歳でも40%弱で1位となっている。18~24歳でも、30%弱と他の選択肢との差は僅差であり、結婚適齢期の女性の多くが、「結婚できない/しないだろうなぁ」と思いながら過ごしている、ということを意味している。それ以外の選択肢でも、両立の維持上昇、再就職の減少など、理想のライフコースと同じトレンドが見られる。(結婚可能性の問題は置いておいて)ライフコースを考えるに当たって、キャリアの中断という想定をあまりしていないのかもしれない。
一つ違いがあるのは、予定のライフコースでは、DINKs勢の伸びが殆ど見られない、ということだ。少なくとも、2021年の理想と比してその動きは弱いように思える。
コーホート分析更新版
次に、039で検証したコーホート分析についても、2021年のデータで更新しよう。まず、34歳までのピースが埋まった、1986~1987年生まれの女性について。
・・・今までの内容と(当然だが)被ってて、なんかいまいちコメントし難いな。理想・予定としての再就職の急減、非婚就業急増と、予定として両立すら急減しているくらいか?
また今回は、コーホートの年代ごとに、各ライフコースを選ぶ人の割合の変化も示してみた。
コーホート分析の考え方として、特定の大きなショック(特定のタイミングで全年代に与えられるショック)と、自然な考え方の変化(年齢に応じ、また先輩方の背中を見て徐々に波及するショック)の2種類を分けて考えることができると思う。今回はそれもみるため、1996~1997年生まれ(2021年時点で24~25歳)まで含めた(ので、後述するとおり、結構エイヤでやっているグラフである)。
その意味でいうと、2021年の非婚就業やDINKsを理想とする者の増加は、1997年生まれまで波及した、全年代的なショックのように感じられる。コロナなのかそれ以外なのかはわからないが、いずれにせよ、2021年前頃で、結婚や出産に関する考え方の大きな変化があったと見てよいだろう。一方で、例えば専業主婦の理想・予定の減少は、絶対水準はともかく、元々趨勢的に年齢を重ねるごとに減少しており、ある程度は「自然な考え方の変化」の範疇かもしれない。再就職の減少も、全年代的なショックとは断定し難い。総じて、非婚就業やDINKsの増加にオフセットされた変化の範囲と言えなくもない。
まとめ
個人的な注目ポイントは、全年代的な、かつ理想・予定双方の未婚就業やDINKsの増加と裏腹の、再就職の急減だった。個社のレベルで産休育休の取り組みが本格的に拡大してきたのかもしれないが、それ以上に、「出産してもキャリアの中断はしない」「キャリアの中断になるくらいなら子どもを産まない(≒結婚しない)」という思いの表出のようにも感じられた。
また、依然、理想と予定の差という意味では未婚就業が最大(予定の方が少ない)である。クロスで取れないので詳細は不明だが、不本意ながらの未婚就業が多いだろうことは推察される一方で、その不本意さが、恋愛そのものか、キャリア的な問題かいずれに起因するものかは、追加検証の余地があるだろう。
もう一つ、結婚と出産の解体の文脈で、DINKsの理想と予定の差はも気になる。感触的に、「DINKsを理想とするが非婚が予定になっている」ので、DINKsは理想上は伸びても予定上は変化がないように思える。もう少し踏み込むと、上の疑問とややかぶるが、DINKs理想者は「結婚したいができないので不本意に非婚になっている」のか、「結婚する必要がない(DINKsで(が)良いというパートナーを探す気がない)ので非婚を予定にしている」のだろうか?後者を強がりと断じるのは自由だが、恋愛のコスパという令和の新事象が提起されるなか、結婚にまつわるいちテーマとして興味深くは感じる。
前回、結婚と出産の解体可能性について言及した。それを踏まえると、今回のライフコースの分析は、解体の背景の一つとして、出産に関するキャリアプランの問題の存在を示唆している・・・のかもしれない。
次回は閑話休題的に、ライフプランを別の角度から見てみる。主にデータを触ってみたいので。
補足・データの作り方等
データはいつもの出生動向基本調査。ライフコースの作り方も038と同じ。
一つ補足すべきは、図13~17のコーホート分析。1987年以降生まれの人について、実は、
・1986年~1987年生まれのうち、2021年のデータは、「30~34歳」のカテゴリとしてデータを示したが、1986年生まれの一部は35歳になっている。
・1991年~1992年生まれのうち、2021年のデータは、「25~29歳」のカテゴリとしてデータを示したが、1991年生まれの一部は30歳になっている。
・1996年~1997年生まれのうち、2021年のデータは、「20~24歳」のカテゴリとしてデータを示したが、1996年生まれの一部は25歳になっている。
という問題がある。生まれの年齢をずらせばいいじゃん、と思うかもしれないが、今度はそれぞれ「18~19歳」のカテゴリの数字の方でズレが出てきてしまう。
「生まれの一部」がどれほどかというと、元調査が「6月30日時点」の回答となっているので、その半分がカテゴリから外れることになる。決して小さくはないが、2年分の全体から見れば3/4は正しいし、そもそも2年幅しかないコーホートの意見を、5歳幅の意見で代表させてるし、元々精度が低いから、まあいいやって思いました。