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趣味のデータ分析038_子どもを持つということ④_20歳、結婚はしないと思う。

前回は、女性の予定、理想のライフコース、そして男性がパートナーに期待するライフコースがどのように変化してきたかを確認した。
そして、
1. 過去は再就職コースが多かったが、漸減傾向にあること、
2. 対照的に両立コースが漸増して、足元では最も多い集団になっていること、
3. 専業主婦コースも、1987年には両立コースよりも多いくらいだったが、総じて漸減傾向にあり、足元では完全に両立コース、再就職コースに逆転されていること

の3点が確認できた。DINKsがもっと多いと思ってたんだが、全然いなかったんだよなぁ。

若くても結婚の予定はない

さて、記事のベースになっている出生動向基本調査は、基本的に「18歳以上50歳未満」の独身者を対象に集計されており(1987年以前は35歳未満まで)、年齢別の構成としては、20~24歳の者が最も多い(2021年の調査はデータがない)。

図1:出生動向基本調査回答者の年齢別構成比
(出所:出生動向基本調査)

年齢が高くなれば未婚者の数は当然減少するし、これは国勢調査の実態等とも合致するのでそれは良いのだが、20~24歳は学生も多く含まれていて、結婚、妊娠、出産を踏まえたライフコースをあまりリアルに考えていない人も多い気がする。逆に35歳以上の女性は結婚/出産のハードルも上がるため、出産を念頭に置いた分析でこの年齢層を対象に含めるのは適当ではない(実際、調査の本文では、ほぼ34歳以下を対象に絞って集計、分析している)。
というわけで、以降では、女性のライフコースに関する考え方が、年齢層でどう異なるか、特に18~34歳の女性に絞って確認しよう。ただし、年齢層別にデータを取得できるのは1992年~2015年までなので、そこの範囲でのデータになる。

グラフの量がやたら多いので、とりあえず一気に羅列する。まずは理想のライフコースについて。

図1:18~19歳女性の理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図2:20~24歳女性の理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図3:25~29歳女性の理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図4:30~34歳女性の理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)

前回、1992年~1997年にかけ、専業主婦を理想とする女性が大幅に低下していたが、それは特に18~24歳の若い女性が専業主婦を理想としなくなったことが大きな要因だ。30~34歳女性の専業主婦理想は20%前後で安定しており、この年代はもともと、比較的専業主婦を志向していなかった実態がうかがえる。こうした女性は、それまで単身で働き続けていたのだろうし、結婚しても継続して働き続ける、ということに違和感がないのだろう。
また、理想としての非婚就業の漸増(2021年の急増をフォローできていないが)は、30~34歳の高齢女性で増加しているのみで、それ以外の年齢はほぼ横ばいである。
両立、再就職は年齢層で水準感に差はあるが、トレンドとして両立の漸増、再就職はそれと同じ~上回る程度で横ばい推移、というのは全体の動きと全体的に変わらない。

次に、予定ライフコースの年齢層別推移を見てみよう。

図5:18~19歳女性の予定のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図6:20~24歳女性の予定のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図7:25~29歳女性の予定のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図8:30~34歳女性の予定のライフコース
(出所:出生動向基本調査)

水準間に結構な差があるのだが、基本的には再就職が強いものの漸減、両立がトレンド的に強く、水準的にも2015年時点で再就職とほぼ同水準までつけている(2021年には逆転している)。
また、少し専業主婦動向も興味深いが、それ以上に面白いのは非婚就業動向。実際のところ、30~34歳の、「非婚就業になりそうな人」の予定としての非婚就業の割合は、30%前後で、ここ30年結構安定している(と言うか、30~34歳の予定コース構成割合は、相対的に動きが最も小さく見える)。むしろ、非婚就業を予定とする若い人たちが、2002~2005年頃から増加していることで、全体としての非婚就業予定が増えているのだ。2015年時点では、18~19歳で17.6%、20~24歳で17.5%、25~29歳で21%が、非婚就業の予定である。それぞれ1992年が6~11%だったことをみると、10%前後の上昇である。

理想と予定の差

次に、年齢別のライフコースの理想と予定の差を確認してみよう。差分を取るだけなので、以下一気に示す。

図9:18~19歳女性のライフコースの理想と予定の差
(出所:出生動向基本調査)
図10:20~24歳女性のライフコースの理想と予定の差
(出所:出生動向基本調査)
図11:25~29歳女性のライフコースの理想と予定の差
(出所:出生動向基本調査)
図12:30~34歳女性のライフコースの理想と予定の差
(出所:出生動向基本調査)

さて、差分で示すといくつか興味深い結果が見えやすくなった。一つは、特に若い女性において、1997年以降「両立」が理想超になっているということ。2010年以降の20-24歳、また25歳以降では、両立より専業主婦の理想超過幅が大きくなっているが、それでも若い女性の「理想としての両立」の強さが伺われる。一方で、特に近年、専業主婦の理想超の傾向が強まっていることも指摘できる。これは、理想像として一定数は専業主婦を掲げるが、それ以上に専業主婦を予定しているとはいえないので、結果差分が広がった、ということが考えられる。というか、年をとるにつれ専業主婦の理想超が顕著になっていることをみるに、「理想としての専業主婦」を掲げている女性が結婚できていない(両立を理想とする女性はさっさと結婚してこのアンケート自体から抜けていく)のではないかとも思ってしまうが…
もう一つは、高齢になるほど非婚就業のマイナス側がすごいことになっていくということで、まあそれ自体は「生涯未婚」がリアルになっているだけなのでわかるのだが、それ以上に、先程指摘したとおり、非婚就業を予定とする若い人たちが、2002~2005年頃から増加していることで、非婚就業のマイナスが大きく立っていることが伺われる。

まとめ

年齢別時系列データとしては、特に1990年代なかば以降、若い女性が専業主婦を理想としなくなったこと、30歳以上女性では、理想としての非婚が増加していることがわかった。
また予定としては、特に若い女性で、両立、そして非婚の割合が増えていることもわかった。若いうちから「非婚の予定」を掲げるということは、結婚を早々に諦める(少なくとも、具体的に考えるのやめている)という考え方の変化を示唆している。
さらに、予定として専業主婦を掲げる人も漸減している。理想としての専業主婦は、往時よりはかなり減少したとはいえ、一定数は残っているので、専業主婦に関する理想と現実の格差は拡大している姿が伺われた。

当初はDINKsについてもうちょい分析したかったが、結局どの世代でも、分析の価値ないくらい少数派だった。ただ、特に近年若い人でも非婚を予定とする人が増えている、というのは興味深い発見であった。035で指摘した、結婚希望者数が減少している、というデータとも整合的である。というか、非婚水準が20%前後というところまで近い。「結婚願望がある人はせいぜい80%」というのは、足元かなりリアルな水準なのではないか。

次回はせっかくなので、同じデータでコーホート分析をしてみる。コーホート分析を作れる公表データは珍しいし。得るところがあるかはわからない。

補足・データの作り方等

いつもと同様、すべてのデータは、第16回出生動向基本調査から取ってきている。

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