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体験エッセイ 乗り物酔いの遺伝型
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昨年の7月末に娘と初めてヨットに乗った。小樽湾をめぐる90分間のセーリングだ。
乗ったのは、風を受けるためのジブセールが2本あり、白い船体にブラウンの線が入った美しいヨットだった。
爽やかな天候と海の穏やかさがあいまって素晴らしい体験だった。
娘は乗り物酔いをしやすいので、用心のため酔い止めを飲んでの乗船だったが、薬が効いてくれたようで、無事に過ごせた。
ヨット体験が終了する9月末までに、もう一回乗ろうと家族を誘った。
長男は「揺れるところは嫌だ」とにべもない。
彼が『円山動物園』で遊園地デビューした時、真っ先にコーヒーカップに乗ったが、喜ぶどころか真っ青になって吐いてしまった。
その時は乗り物酔いと認識しなかったが、後々あれが最初だったとわかってきた。
子供たちが小さいころ、〈おたる水族館〉前にある遊園地の絶叫マシン“海賊船”に乗って、歩けないほど気分が悪くなったことのある夫は「全然興味ない」。
他県に住む次男は幼い時、富士スバルラインで車に酔ったし。
以前、大学生だった娘と、徳島県の祖谷渓のかずら橋へ行った。
つり橋は上下左右に揺れ、足元の隙間から14㍍下の青い渓流が見える。
娘はキャーキャーいって橋を渡れない。仕方ないので私は急ぎ足で往復した。
ネット情報によると、乗り物酔いは遺伝的な要因が57~70%もあるという。
我が家は5人家族だが、4人が乗り物酔いしやすい。
"乗り物酔いの遺伝型”の方が“乗り物酔いになりにくくなる遺伝型”よりも強力なのだろうか。そのため、私は家族と楽しみを共有できない。