『世界一楽しい決算書の読み方』
決算書は投資家や株主などの
ステークホルダー(利害関係者)のために開示されている
決算書は、一般的に①貸借対照表(B/S)、②損益計算書(P/L)、③キャッシュ・フロー計算書(C/S)のほか、④株主資本等変動計算書(S/S)の4つからなる。中でも①~③は「財務三表」と呼ばれ重要なものである
貸借対照表(B/S)について
①貸借対照表は、「財産の状況がわかる」、
②項目によって、左右にグループを分ける
B/Sでは、左側(借方)に資産をまとめ、右側(貸方)には負債と純資産
③借方と貸方は必ず一致する
B/Sは、「会社にどのような資産があるか」という財産の状態のみならず、「その財産を、誰から・どのように調達してきたのか」という調達の状況、さらには、「企業の財産がどのような形で運用されているか」という運用の情報も把握できる
資産の部
流動資産:一年以内に現金化される予定のものや、現金の代わりになるもの
(例)現金、銀行の預金、受取手形、製品、商品など
固定資産:流動資産以外の資産
(例)建物、土地、敷金など
負債の部
流動負債:一年以内に支払い予定のもの
(例)支払手形、買掛金、短期借入金など
固定負債:流動負債以外の負債
(例)長期借入金、社債、退職給付引当金など
純資産の部
株主資本:経営者が会社に入れたお金や、経営活動で生み出した利益
(例)資本金、利益剰余金など
株主資本以外の項目:資産でも負債でもない項目
(例)その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定
※純資産を見る際には企業が債務超過(負債の合計額が資産の合計額を超える場合)に陥ってないかどうかを必ずチェックする
・メルカリなどのIT企業は基本的に固定資産が少ない
・製造業などものを作るのにセウ日が必要なビジネスは
固定資産が大きくなる傾向にある
・ブックオフなどのリアル店舗を必要とする小売業は固定資産や
本などの商品がB/Sのしさんの大部分を占めるようになっている
・SPAモデル:自社で企画から製造、販売までを一貫して行うモデル
・事業会社であれば、通常、預金は現金と同じように資産になるが
銀行から見ると「他人から預かっているお金であり、返さなければいけない」という義務があるため預金は負債(貸方)に入る
・貸出金は企業からすると、返済する義務があり、通常は負債に計上
しかし、銀行から見ると「将来返してもらうお金」なので資産に計上される
・地方銀行は主に融資業務で成り立っているため資産の貸出金の割合が多くなる
メガバンクは融資業務だけでなく為替業務や有価証券の運用業務など様々な業務を行うため資産のバランスは良くなる
・ローンによる自動車購入などは売上債権(流動資産)に計上される
・自動車メーカーは車を売る際の金融ローンでも儲けている
損益計算書(P/L)について
①損益計算書(P/L)は特定期間における会社の経営成績を表す
②P/Lでは、左側(借方)に『費用』をまとめ、右側(貸方)には、収益をまとめる
③借方と貸方は必ず一致する
・費用側では「企業が利益を獲得するためにどのような努力をしたのかを読み取ることができる」
・収益側では「企業がどのようなところから売上を獲得したのかを読み取ることができる」
利益の種類について
①売上総利益:売上高から原価を差し引いて算出
②営業利益:売上総利益から販管費(販売費及び一般管理費、人件費や水道光熱費、広告費など)を差し引いて算出される。一般的によく言われる利益はこの営業利益を指す
③経常利益:本業で獲得した営業利益に、本業以外で獲得した収益(営業外収益)を加算し、費用(営業外費用)を控除して算出される。「会社の実力が一番反映される利益」とも言われる
④税引前当期純利益:特定の期間に発生したすべての事象を加味して算出された利益。経常利益に、特別損益と行った毎期のように発生しない事象(火災損失や事業の売却)から発生した利益や損失を加算して算出
⑤当期純利益:税引前当期純利益から、法人税等の税金コストを控除することで算出
イメージは売上高から、各種発生した費用を引いていき、最後に当期純利益が残る感じ。この当期純利益がB/Sの純資産に返っていく
・資生堂などの化粧品メーカーのP/Lは原価が少なく、販管費が大きくなりやすい。その理由として化粧品の原材料の大部分は水なので、かなり原価が安い一方、新商品が頻繁に出たり、競合商品が多かったりと、広告・マーケティングに力を入れないといけないため。
・フランチャイズ方式(本部であるフランチャイザーが、加盟店であるフランチャイジー2商標の提供や出典サポートをすることでフランチャイジーからロイヤリティを徴収するビジネス形態)をとっているセブン-イレブンなどのP/Lの特徴として利益率が高く(原価率は低く)表示される傾向がある。その理由は加盟店の収益は本部の財務諸表に反映されるが、負担したコストについては反映されないためである。表面的な数字だけを見ると低い原価率で表示されているが実際に店舗で販売されている商品の原価が低いかと言うと、そうではない。
・財務諸表を読み取るためにはビジネス面での理解が非常に重要になる
・コメダHDのビジネスは、フランチャイズにコーヒー豆などの商品を卸売することがメインのBtoBビジネス。つまり、原価率が高く、販管費が相対的に小さくなる「卸売業に近い」形のP/Lになる。
・ファーストリテイリングや「ZARA」などを展開するインディテックスのビジネスモデルはSPAモデル。製造段階から関与することで中間マージンが乗らず低価格の商品を提供できる
・しまむらやのビジネスモデルは仕入販売。製造から卸売、卸売から小売に販売する段階でマージンが乗せられてしまうため価格コントロールが難しい
・棚卸資産回転期間:商品を仕入れ、それを販売するまでにどの程度かかるかを見る指標。基本的には短ければ短いほうが良い指標。
・ユニクロの商品は棚卸資産回転期間が長い→とはいえ集客のためには定期的に新商品を投入する必要がある→値引きセールをして商品の入れ替えを行う→粗利率(売上総利益)が悪化する
キャッシュフロー計算書について
その企業の現金・預金がどれくらい増減したのかを表すもの
C/Sを見る際の企業の活動は大きく分けて三つ
①営業活動:本業の営業活動で現金がどの程度増減したか
営業活動には「商品を販売して手に入れた現金」「材料を仕入れるために支払った現金」「広告宣伝費などの販管費の支払いの際に流出した現金」などが該当する
また営業活動の区分には「税金コストの支払」や「災害に伴う保険金の受け取り」などの、投資活動や財務活動にも区分されない項目も記載される
営業C/Sは3つの区分の中でも特に重要。ここがプラスになっているかどうかは、利益が出ているかどうかよりも重要視される場合がある。
【営業C/Fがプラスの場合】
本業によってしっかりと現金預金が回る状態にあり、順調な状態であると見ることができる。
【営業C/Fがマイナスの場合】
営業C/Fが継続的にマイナスになっている場合は、事業を早急に改善していく必要がある。なぜなら、投資活動や財務活動だけで永続的にマイナスを補い続けるのは難しいから。
②投資活動:投資によってどの程度現金が増減したか
投資C/Fは、投資を行って現金を支払ったのであればマイナスになり、設備や株を売却して現金を受け取ったのであればプラスになる
投資C/Fで見るべきポイントは、営業活動や財務活動にとって流入した現金を投資して、「事業拡大を目指した動き」を取れているか、という点
投資C/Fを読み解くことで、企業の投資方針などの経営スタンスを推測することができる
③財務活動:資金調達と返済でどの程度現金が増減したか
財務C/Fは、資金調達をして現金預金が増えたらプラス、減ったらマイナスとなる。企業が上場した場合、そのタイミングでも財務C/Fは非常に大きくなることが多い(上場のタイミングで投資家から株式による資金を調達することができるから)
・一般的に企業を買収した場合、企業の有価証券を買うのに現金が出ていくため、投資C/Fはマイナスになるのが普通
①新規連結子会社株式を取得したときには原則キャッシュ・フローに表示
②-1 取得に要する支出>保有する現金等=支出のほうが大きいため↓
②-2 取得に要する支出<保有する現金等=支出のほうが小さいため↑
ヤフーがジャパンネット銀行を買収した際には
株式取得に伴う支出よりもジャパンネット銀行が有する現金のほうが多かったため投資C/Fは上向きの矢印となった
P/LとB/Sを組み合わせて見る
P/Lで計上された利益は、B/S上の純資産(利益剰余金)として、計上される
つまり、利益剰余金という項目は、過去の利益または損失の積み重ねによるものである→利益を出し続けている企業は純資産の金額がかなり大きくなる(例:ニトリなど)
「B/SとP/Lは利益と純資産という部分でつながっている」
鉄道会社の基本戦略は、利益率の高い交通事業・不動産事業で利益を上げることにある。ただし、これを実現するためには、鉄道と不動産の利用者を増やす必要がある。東急グループでは、小売業などを通じて鉄道沿線の開発投資を行うことで、鉄道や不動産の利用者を増やし、結果的に利益率の高い交通事業・不動産事業で大きく利益を挙げられるというビジネスモデルになっている
イオンのビジネスモデル
まず集客力の高いリテール(個人の消費者に向けた小売)で顧客を集める。顧客にとってはリテールはよく利用するもので、価値も高くなる。
ここに、イオンの金融や不動産を利用すればリテールが安くなるという施策を打つことで、リテール経由で金融・不動産の利用者が増える。
そうすることで、利益率の高い金融・不動産へ創客し、グループ全体で稼ぎを最大化することができる
・金融のB/Sはかなり大きくなる傾向にある。お金を回して利益を得るモデルなので、多額のお金が必要になり結果としてB/Sが大きくなる
売上高に計上される金額の違いで言うと、モール型(楽天など)は、プラットフォーム上で取引された価格の手数料がメインのため、利益率は高くなるが、売上高は大きくなりにくいという特徴がある。
一方、倉庫運営型(Amazonなど)は商品販売収入がメインになるため、利益率は低くなるものの売上高は大きくなりやすいという特徴がある
利益率が高いプラットフォーム型のほうが優れたビジネスモデルに見えるが、Amazonが倉庫運営型を行っている理由は、モール型の弱点にある
モール型の弱点は
・物流品質にバラつきが出る
→それぞれの出店者に物流などを任せるため、品質が不安定になる
・規模のメリットがない
→大量仕入れによる値引きなどを使えない
・利用者の利便性が悪くなる
→複数のお店から一気に購入した場合、それぞれのお店から配送料を請求されてしまい、配送料が高くなると行った不便が生じる
有価証券報告書の「第4 提出会社の状況」→「コーポレート・ガバナンスの状況等」→「役員の報酬等」 ここには役員に総額でいくらの役員報酬を出すのか、1億円以上の報酬を受け取る役員の個別の報酬額などが記載されている
有価証券報告書の「第5 経理の状況」からは従業員に対して払った給料の総額が記載されている
そして「第1 企業の概況」→「従業員の状況」を見れば、従業員数がわかるので、一人あたりの給料額を推定することが可能。
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