マルちゃん「赤いきつね」CMの炎上に思うこと

現在ネットで騒がれている「まるちゃん」のCMには私も不快感を感じた。
とはいえネット上の意見とは違う意味で不快を感じたので書いていく。


アヘ顔×食レポ漫画は許せる

「この表現は普通だ」という反論があるのもわかる。
グルメ漫画の中に、アヘ顔食事ジャンルがあるからである。(それが市民権を得ているかは知らないが)

グルメ漫画の流行は、「いつかティファニーで朝食を」で始まったと記憶している。女から始まり、男バージョンもできて、異世界バーションもできて、いまでは「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」のような亜種まで出来ている。いまや一つの確立されたジャンルとなるほど進化した思う。
ここでいうグルメ漫画というのは、女性(あるいは男性)が一人で(あるいは複数人で)ご飯を食べる漫画である。一話完結式で途中から読み始めてもついて行ける上、縦軸でも登場人物の成長や交友関係の変化があって読みやすい。
実際にあるお店でのリアル路線もあれば、自炊でそれをやるレシピ本も兼ねたものまで様々だ。

ドカ食いダイスキ!もちづきさん(まるよのかもめ)

グルメ漫画における食事シーンは、シズル感を大切にしており、「ほわほわ」「じゅーじゅー」などの擬音語を多用する。

さらに、熱々のうちに「はふはふ」とほおばる登場人物の口元のアップや、「ん~~~」とかみしめる顔など、性を匂わせる演出がしばしば起こる。
グルメ漫画の一つの流派として、食事×アヘ顔をしている派閥は確かにある。そのため、「こうした表現は枚挙にいとまが無いから許される」という反論も、たしかにたくさんあるなあと思う。だからといって許されるとは思わないけど。

いつかティファニーで朝食を(マキヒロチ)
食戟のソーマ(附田祐斗(原作)、佐伯俊(作画))
ワカコ酒(新久千映)
かしましめし(おかざき真里)

おいしいものを食べるときの快楽は、性行為のそれと同じ

グルメ漫画だけではなく、食欲と性欲を同一表現として語る小説や表現物は多い。
「一緒に焼き肉を食べるってことはすでに性交渉済みだよね」という言説もあったと思うけど、食欲と性欲が一緒にされる言説は多いだろう。

私の立ち位置はというと、本当においしい食事をしたときには性交渉で絶頂をかんじたときと同じくらいの悦を感じる。

今でも覚えているけど、就活で銀座の企業を受けた帰り、東銀座の喫茶YOUでオムライスを食べた瞬間は本当に「っんん////あん////」って口にでかけたくらいに美味しかった。
(その後10回くらい行っていると、絶頂を感じなくなってしまった。マンネリというやつだろうか)

CMでやることではない

やりたいことは本当によくわかる。ASMR、グルメ漫画のそれ、アニメ、こうした近年の流行物を掛け合わせたCMをつくりたかったんだろうな〜〜という製作陣の意図を感じる。

いつか、AKBの高橋みなみがカツ丼を爆食いして、食べ方が汚いと炎上したCMを思い出した。

(無断転載だが)https://www.youtube.com/watch?v=vFVTY2vBiwc

誰かの欲求(高橋みなみの場合は食欲)が全面に出ているものを見て不快感を感じるのは不思議ではない。漫画だったら自分が選び、能動的にみるものだからいいけれど、CMだと受動的に目に入ってきてしまうものだから「嫌なら見るな」とは言えないだろう。
普段アヘ顔グルメ漫画を見慣れていない層や、エロ系ASMRを見る層にもヒットしてしまったのが今回の敗因だろう。

すなわち、「赤いきつね」という日用品のCMには適していなかったのではないかと感じる。
そして、そこに対する批判は「好きな人はそれでいいけど、CMでやるべきではないよねっ」ていうものであり(アツギのストッキングの炎上事件と一緒)、エロい表現を規制したり、エロい表現を好きな人たちを否定するものではない。もし好きなのであれば、一般市民が見るCMという形ではなく、深夜アニメや漫画などでたくさん楽しめばいいと思う。

アヘ顔になるほど、「赤いきつね」って美味しいか????

私が「赤いきつね」を食べるときは、最悪な気分でいる時である。お風呂を3日くらい入らない風呂キャンセル界隈というやつをやって、鬱で、もうなにもつくる気力がないとき、自分の寿命が短くなるのを覚悟で不健康な食生活で胃を満たすのがマルちゃん「赤いきつね」である。

かわいい女の子が、丁寧に髪の毛を耳に欠けて「ん……ハフッ///」ってやってもらえるほどでは決してない。無音の中に虚しく響くしょうもないYoutuberの囃し立てる声。
企業側から「弊社商品はかわいい女の子がアヘ顔で丁寧に食べてくれるほどの商品です~~~」ってPRをされるのが不快である。

同時に、男verも不快だった。「緑のたぬき」は残業中のイケメン先生がキラキラした絵柄でガッツいて食べるほどのものではない。ヒプマイ観音坂独歩のような死んだ瞳で「あー死にてえ。仕事辞めてえ」と言いながらずるずるとすするものである。

こんなCMだったら良かった?

山の頂上で食べるカップラーメンというシチュエーションなら「あ///ん///ふぅっん……」とハフハフ言いながら食べるだろう。そこまでおかしくなかったのではないか。

もしくは、こんなに少女漫画作画にしないで、ゴルゴ13のような絵柄でバグバグ食べるアニメーションなら「これぞ!!!メシ!!!」って感じでよかったんじゃないか。

もしくは、、職員室で残業する男がカップラーメンを頬張り、涙がぽろぽろ落ちてきて、翌日に退職届を出すようなストーリーならここまでの反応はなかったのではないか。
カップラーメンは私たちに活力を届けてくれるようなものではなく、タバコや酒と同じように、健康を害しながらも刹那的な欲求を楽しむ、ゆるやかな自殺である。怠惰な私たちのそばにいてくれる愛おしい存在、それがインスタント食品であるはずだったのに、美男美女の女の子や男の子が「ン////」と言いながらキラキラフィルターで装飾されているのが嫌だった。

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アンナカリイナ
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