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第85回 著書『原爆誕生と戦後』の試練

拙著第4作『平家物語誕生」を上梓した後、私は流れから『太平記誕生』を書く積りでいました。しかし『源氏物語』や『伊勢物語』と違って何と源平の戦いにはたくさんの方が亡くなったという事を改めて知りました。そして現代にも戦争はある。誕生シリーズでやっているので批判もこめて『原爆誕生』をそう人生の最後に書けたらいいなと思って資料を集めていました。
ある時、義理の甥と話していて『太平記誕生』の構想と、まだ調べかけなんだけどと『原爆誕生』の話をすると甥は目を輝かせて、「知らない話ばっかりやった。原爆の方を先に書いた方がいいんじゃないの?」と言いました。私もそちらの方が興味が出てきて、だいぶ構想はまとまりました。

県に芸術文化課というのがあり、自費出版に審査をして補助金が出るのです。私もそれを知って、第3作『清盛の時代』と前述した『平家物語誕生』は10万円の補助金を頂きました。80万円以上する費用にとっては有難い事でした。それで私は第5作の『原爆誕生(その時はその名)』でタイトルとあらすじを書いて送り、補助金を信じていました。ところが3月に電話があり、えらく早いなと思っていたら「あのー今回は出せないという事でー」と言いにくそうにしてました。「理由は何なのでしょうか?」と聞くと「ちょっと研究書とかには出せないというか・・・」と口ごもっています。ああ、こういう現代もの、戦争ものにはクレームが来るかも知れないから除外したんだな、と何となく感じました。
補助金を貰えなかったのは痛かったし、また写真が著作権法でかなり使えないというので、その時、臨時講師で行ってた学校の美術部の生徒や自分でも描いたりして男とか2年前の4月末に『原爆誕生と戦後』という題で発行にこぎつけました。
ポーアイの工場から500冊を積んでまあ車を軽くさせたいというのもあり、定価も高い(税込1980円)のでその足で数件の図書館に寄贈しました。
その中でA図書館にも過去の4作は全部寄贈していましたが、その時、受付の中年の女性の表情が何か苦々しい表情だったのが気になりました。そして同意書というのを書くのですが、何かいつも以上に「この図書館で置くかどうかは判断させて頂きますからね」と強く念を押されました。私は嫌な予感がしましたが、まさかなと思っていました。
そして国会図書館は勿論ですが、兵庫県立図書館、加古川図書館、播磨図書館、そして大阪、広島、長崎と寄贈した所はすべて検索すると蔵書になっているのですが、A図書館だけが蔵書になっていないので電話してみました。すると「あの本は置けません」「理由は何ですか?」「言えません」そして何度か無意味なやり取りがあり、私は「分かりました。じゃあ返して下さい」と言うと「返せません。同意書に書いてあるでしょ!」という返事です。
私は納得がいかず、ある友人が「市長のご意見箱というのがあるからメールしてみたら。A市は『核非武装都市宣言』してるし」と言ってくれ、まあ暴言はあるものの男気があり、善悪ははっきりしてくれそうな市長に事情を記したメールを送りましたが、係の人から「受け取りました」というのがあったきりで、返事はありませんでした。また私が落ち込んでるのを見て、掛け合ってくれた方がいるのですが、「同意書にサインしてるでしょ」と免罪符か水戸黄門の印籠かの様に絶対的な権威を振りかざされて、「ゴメン、負けだわ。サインしてるから」と慰めてくれました。でもそもそもサインしなければ置けない訳なので。せめて返して欲しかったですね。その本は今どこにあるのでしょう?
結局周囲は「やっぱりクレームが来るかも知れないからそれを避けたのかもしれないね」と言ってくれましたが、私はいまだに納得がいっていません。それこそ忖度というものではないでしょうか?今後ともこの作品には試練が付きまとうかも知れません。けれど少数ですがこの作品を絶賛してくれた方もいます。そしてもう寄贈するのが怖くなってやめてしまいましたが、六つの一般図書館に置いて頂けた事を感謝します。(続く)

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