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第27回 クリスタル・ナハト~水晶の夜 

10月(1938年)にリーゼの様子を見に来たボーアは全てを悟って、別れ際にそっと言いました。「我慢するのですよ。いつか貴女の才能が認められますから」 リーゼは寂しく頷きました。ボーアの世話で入ったのですから、すぐにこの研究室を辞める訳にはいきません。

11月になって、ドイツ国内ではどうとうユダヤ人の店で物を買う事が禁止され、9日の夜、フランスでドイツ外交官がユダヤ青年に殺されるという事件が起こりました。もちろんドイツ外交官が先にユダヤ青年の両親に暴力・迫害を加えた事が原因ですが、このニュースを聞いて、憤激した人々はユダヤ人の商店のガラスを割りまくり、中からユダヤ人を引きずり出して、100名余りを殺害しました。そして3万人以上を収容所に入れ、家財を横領しました。何十万枚いう割れたガラスが夜の灯りに光って、「水晶の夜ークリスタル・ナハト」と呼ばれました。ユダヤ系の人々はドイツ脱出を本気で考えなければならなくなりましたが、出国もままならない状況になっていました。(続く)

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