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第1回 朱雀院(1)

年末までに、新しい源氏ものをという依頼があり、『深掘り「源氏物語」の時代』(仮題)で執筆中です。ここでは習作がてら、まとめていきたいと思います。
第1回目に取り上げるのは「朱雀院」です。『源氏物語』では主人公・光源氏の異母兄として登場し、この方だけ見てると美貌・才能まずまずなのですが、源氏と比べてしまうと、常に「負け犬」の立場を取っています。生母・弘徽殿の女御の意見も強く、やや「マザコン」系の感じです。(光源氏も立派な?マザコンですが)
ところが朱雀院は、源氏に対して好意を持っているのです。愛する朧月夜を横取りされたり、好きな斎宮を源氏は知っていながら、冷泉帝の女御にしてしまいます。それなのに、愛する皇女・女三宮をぜひ源氏に貰ってしまうと懇願します。女三宮の生母が源氏の永遠の恋人・藤壺の妹(少し無理な設定だった)という事で源氏は受けてしまい、結局この結婚は失敗で、朱雀院が愛する女三宮は出家せざるを得ない状況になってしまいます。

そして「朱雀院」という天皇は実在します。最近の日本映画で『源氏物語』を撮影する時、さすがに忖度して別の名を使用しましたが、紫式部はどうしてあえて実名を使ったのでしょうか?
それはやはりリアリティが出るからだと思います。私の少年時代、『巨人の星』に長島選手や王選手が登場するとこれは現実の話だろうか?と一瞬錯覚してしまいます。『エースをねらえ!』でもエバートやナブラチロバが登場しました。
もちろん聡明な式部は周囲(父や友達)に相談し、使っても大丈夫そうだと思って使ったのでしょうが。(続く)

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