トマト
この前、一人称が「拙者」の人を初めて見た
実在した
その人は格好こそ最近駅周辺でよく目にする手荷物財布と携帯だけ系若者のようなぴちぴちのジーンズとぴちぴちの白Tシャツでミニモヒカンだったが
一人称が「拙者」だったのだ
こんな機会二度とないと思い僕は
「どうしたでござるか?」
「殿はご無事でござるか?」
など、人見知りとは思えないペースで話しかけていた
でも一人称が「拙者」の人はきょとんとしている
僕は意を決してたまたまポケットに入っていた巻物とマキビシをチラつかせてみた
しかし無反応
なんでだ
どうしてだ
と思い、もう一度よく彼の話を聞いていると
一人称が「拙者」ではなく「瀬下」だった
僕はとんでもない勘違いをしてしまった
一人称が自身の上の名前の人なんてザラにいる
これは申し訳ないことをしたと思い
謝罪とともに名刺を渡した
すると彼も僕に名刺を渡し、大丈夫気にするなと言って帰っていった
彼がくれた名刺には
「戸田 義昭」
という名前が書かれていた
〜今日のポエム〜
ときどき
まるで空でも跳べるかのような
トリになったかのような
だれも飛べやしないけど
いつだって
すぐに飛んでいきたい
きみの元へ