
認知症研究における観察研究とランダム化比較試験のギャップを考察する
韓国の国民健康保険データベースを用いたコホート研究によれば、SGLT2阻害薬の使用者は、DPP4阻害薬の使用者と比べて、認知症の発症リスクが35%低下(ハザード比0.65[95%信頼区間0.58~0.73】)しました(Shin A, et al.2024;PMID: 39197881)【図1】。

(Shin A, et al.2024;PMID: 39197881より引用)
本研究の平均追跡期間は670日と、必ずしも長期にわたる観察結果ではありません。このような、比較的に短期の追跡期間において、認知症に対する相対危険減少35%という効果量は極めて大きいように思えます。
認知症に対する新薬開発の歴史を紐解いてみても、相対危険減少で3割以上の効果量を報告したランダム化比較試験は皆無です。しかしながら、観察研究においては、特定の薬剤の使用が認知症のリスク低下(あるいは上昇)と強く関連することも珍しくありません(Tang H, et al. 2023;PMID: 36821780/Kuate Defo A, et al.2024;PMID: 37869901)。
今回の記事では、アルツハイマー型認知症の発症リスクについて、観察研究とランダム化比較試験で示される効果量のギャップに着目しながら、その理由を考察してみたいと思います。
アルツハイマー型認知症に対する医学的介入の試み
ここから先は
4,335字
/
1画像
この記事のみ
¥
300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?