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フィルムが良いと思う理由
フィルムが本当に良いと思うのは、撮影のプロセスです。
時間の概念
自分は中判フィルムを主に使っていますが、6x6フォーマットのカメラでは1ロール12枚の写真しか撮影することができません。撮影した12枚の写真を現像してネガ化した後は、1枚ずつ自宅のフラットヘッドスキャナーを使ってデジタルデータに変換します。
スキャニングの過程で構図とピントのチェック、色補正を行い、1枚デジタルデータに変換するのにおおよそ5〜10分。
1ロール全部を仕上げる最短時間は1時間。
近所のラボで現像する時間を加味すると、最短4時間程度の作業時間。
何となく撮っておこう、でアタリが2枚しか無いネガスキャンほど悲しい時間はありません。
4時間もあれば、撮影環境が良ければデジタルのRAW現像で色補正やトリミングを行うことで、おそらく500枚の書き出しは余裕でしょう。
このようにフィルムは枚数で写真を稼げないので、「何となく撮っておこう」ではなくて明確な意思を持って写真を撮るスタンスなので光と構図を読んでから撮影することがほとんどで、ボツの数が増えるほどフィルムスキャニングに手間がかかってしまい時間の無駄だと感じてしまうことも一つの要因です。(もちろんお金がかかりすぎることも要因の一つですが)
撮影のプロセス
自分の場合、大切にしたくなる写真の多くはフィルムで撮影された写真です。色の再現性、シャープ性、解像度などはデジタルの方が優っていますが、どうして不完全なフィルム写真の方に愛着が湧くのでしょうか。
フィルムの物質感、粒子、モノとしての存在、写りすぎないことなど、様々な議論がされているデジとフィルムの違いですが、個人的に思うのは「撮影のプロセス」が全てだと考えています。
現代のカメラは多くの工程がオートメーション化されています。
オートフォーカスの精度、撮影可能枚数の上限値、画像チェックの速さ、分かりやすいインターフェース、様々なニーズに答える機能性
「写真を撮りたい!」
と感じてからシャッターを切るまでの過程は圧倒的にデジタルの方が速く、撮る人の思考量を圧倒的に減らすことに成功しています。
感覚的な写真が撮れるようになったのはデジタルの恩恵ですが、一方でフィルムは1枚を撮るのにそれなりの時間が必要です。
露出、ピント、フィルム感度、残シャッター数など、様々なことを考えながら写真を撮らなければいけませんし、特にフィルムサイズが大きくなるほど行動に制約ができてしまって、もっと考えることが多くなります。
(ライカM型のように広角レンズで絞ってパンフォーカスで撮るようなスタイルは別の話です)
そういった撮影のプロセスの違いと制約された枚数が写真1枚の質に関連しているので、結果的にフィルム写真の方が好きだと感じるのではないか、と。
そもそも論
そもそも、自分は写真を評価されたいから写真を頑張っているのでしょうか。それとも、他者との違いを生み出したいからフィルムを使っているのでしょうか。
こんなに難しく考える必要なんて無いのかもしれませんし、感覚でやってるよ!と思う方も多いはずです。
ですが本当に良いと感じる写真の多くは、自分自身の視点を的確に表現できた時が多いと感じていて、そのヒット率が撮影プロセスに宿っていると考えています。
上記が、フィルムが良いと思う理由です。
Syuheiinoue
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