ネタバレ!踊るシリーズ「室井慎次」負の映画レビュー
踊るシリーズ最新映画、室井二部作の「敗れざる者」と「生き続ける者」を観た。
中学以来、踊るを愛して二十数年。かつて、青島コートのレプリカすら購入した僕は盲目的な踊るファン…のはずだった。
もちろん、室井二部作には特別な思い入れもあった。勢いに任せてスクリーンへと駆け込んだのは久びさで、警察を離れた室井が今何をしているのかと、ワクワクして劇場へ飛び込むほかなかった。
しかし、現実とは残酷なものだ。理想はときに、ことごとく打ち砕かれる。本作では、結末には(なかば無理くりに)納得できたものの、踊るシリーズが好きだからこそ、映画自体へのジレンマも込み上げてきた。
シリーズの過去映像
とにかく、扱い方が雑。何でもかんでも挟み込めば、踊るファンのこっちが喜ぶわけじゃない。ひとたび流れると「ああ、あの話。懐かしい!」と、たしかにニヤけてしまうけれども…。
例えば、後編にあるレインボーブリッジ事件のくだりで、恩田すみれが撃たれた場面が使われているが、室井にからめるなら、室井を俯瞰したシーンではなくね、室井目線であったであろう映像に絞って使うとか、もっとやり方あるだろ。
すなわち、過去映像は踊るシリーズであり、なおかつ、シリーズ復活を象徴するために使われただけで、物語として回想を手助けする役割にはなってない場面も多々あった。
製作側が作品への愛ではなく、人気のあったコンテンツをリブートしようと躍起になっているのですら透けて見えたのが、ホントに悲しい。
田舎者をバカにしすぎ
ちょこちょこ、作品内の矛盾が目につく。舞台となる田舎町の取り上げ方で、顕著にあらわれていた。
室井宅の前で遺体が発見され、町中に監視カメラが付けられて村人が群をなして騒然と…なんて、いくらなんでもバカにし過ぎだろ。
向こう三軒両隣で誰が何をしているのか、町中で筒抜けになる空気感は、自分もムラ社会グングンの街で育ったので、うなずける。
ただ、室井宅周辺には電波が通ってないものの、小学校とか、集落の一部では、スマホを普通に使える環境だよ。町中で監視カメラが付けられたぐらいで、あんなに騒ぐもの…?
都会から来たよそ者をけむたがっていたはずが、うっすらとはあれど、はっきりとしたきっかけがなく、結果としておたがいに丸くおさまったのも消化不良だし。どこか、本質をすっとばしてベルトコンベア式に解決へ向かうという、踊るシリーズの負の側面もジワジワとにじんでいた。
…と、いいつつも。踊るシリーズファンであれば、最後の約数分で心が洗われる。まさかの展開には、驚きで。室井の意思を胸に、かつての湾岸署の面々が、いかに交錯していくのか。シン・踊るシリーズに、期待してやまない。