納豆を食べたいだけなんだって
カイトは怒っていた
「パパ、納豆ある?」
娘のユリエの一言で
食卓にはご飯、ナスと油揚げの味噌汁、キャベツとツナと卵炒め
炭水化物、野菜、タンパク質が揃った朝ごはん
パンでも、シリアルでもなく
朝ごはんはお米と決めているユリエは高校2年生
多分、保育園のときからずっとそう
それはいい
尊重する
だから、今朝もせっせと栄養バランスを考えて
かつ
手早くできる朝ごはんを用意したのに
おはようでもなく
いただきますでもなく
第一声が
「納豆ある?」
「ご飯に文句があるなら…」
カイトが大きな声をあげようとしたとき
「納豆が食べたいだけなんだって」
は?
カイトは我に返り
「納豆あるよ、自分で出して」
とユリエに伝えた
無言で納豆を出して
かき混ぜているユリエに向かって
「おはよう、ユリエは小さい頃から納豆が好きだよね」
と声をかけた
「うん、おはようパパ、ツナ炒めも味噌汁も好きだけどね」
ユリエはただ納豆を食べたかっただけ
朝ごはんに文句があったわけじゃないし
朝から怒鳴らずに済んだけど
さっきの変な声は誰だったんだ?
変な声の主、フリーの守護天使ろくおは
怒り出しそうな人の背後から6秒間話しかけるのが仕事です
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