見出し画像

長距離ランナーの妻と、短距離ランナーの私

昨日、妻とU-NEXTで「ロッキー」を観た。

「ロッキー」の影響を受け、普段全く運動していない夫婦がいきなり10kmもランニングし、生き方においても長距離ランナーと短距離ランナーがいるのではないか?と思った話。

1.「ロッキー」は酸いも甘いも経験した、30代の今こそ観るべき映画だった。

ヘビー級世界チャンピオンのアポロ・クリードと15ラウンドの死闘を戦い抜くロッキー。エイドリアンへの愛を証明した最後の名シーンには夫婦揃って涙。

シルベスター・スタローンの生涯のライバル、シュワちゃん主演の「ターミネーター」シリーズは小学生の頃から好きでよく観ていたが、スタローンの作品は「ランボー」を少し観た程度で「ロッキー」をしっかり鑑賞することは初めてだった。

しかし、この映画は人生の酸いも甘いも経験した、30代の今こそ観るべき作品だったと見終わってから気づく。恐らく、小学生の頃に観ても「エイドリアーン!!」をネタにするだけだったであろう。

この映画は彼が28歳の頃、当時はまだ無名の俳優であり、あまりに金がないためにポルノ映画にも出ざるを得なかったという状況で、主人公の「ロッキー」さながらのアメリカン・ドリームを掴み取った作品である。

自分の脚本を使い、自分を主演に起用しろとプロデューサーに直談判し、「3億円という超低予算で341億円の興行成績」を叩き出しており、そのような背景を知った上で観るとさらに感動できる。


2.影響を受けやすい夫婦は鑑賞後に早速走り出す

「ロッキーのテーマ」が流れる中、ロッキーがゴミで溢れた市場を駆け抜ける名シーン。映画の中では、1970年代の荒廃した雰囲気のアメリカを垣間見ることができる。

映画を鑑賞後、普段まったくと言っていいほど運動せず、休日は1日中ベッドの上で過ごすこともざらにある妻が、「さぁ、私たちも走りに行こう!」と、やる気に満ちた顔で言う。

この時、私は「どうせ、すぐにへばるだろう。。」と、まるで映画内でアポロがロッキーと第1ラウンドを戦う時と同じように高をくくっていたのだが、妻は私の想像を超える持久力を発揮し、結局10kmも走ることに。。

妻の先週1週間のヘルスケアアプリの記録。年末年始明けの月火は在宅勤務、職場は駅直結のビルにあるため、平日はほとんど歩いていない。土曜も1日こたつの中かベッドの上にいたため、このようなブッ飛んだ結果になっている。

身長180cmの私に対し、身長148cmの妻の歩幅は小さく、スピードも私の競歩と同じくらいだったのだが、すぐに疲れた(飽きた)私に対し、妻はただ黙々と走り続けていた。

走る妻を横目で見ながら私は「妻は長距離ランナー、私は短距離ランナーだろうな」と考えていた。


3.私と妻、お互いの背景について

私の話

私は小学生(2~5年)の頃、学年で50m走が一番速かった。

それも、特に速く走る特訓などもしておらず、生まれ持った運動神経によるものだった。

それは勉強でも同じであり、高校に上がるまでは塾にこそ通っていたもののそれほど猛勉強した覚えはなく、高校入学時の英語・国語・数学のテストでは学年1桁台の順位を取っていた。

しかし、年を取るにつれて足の速さは自然と落ちていき、高校では運動系の部活も辞め、理系科目の難しさに文系に進むことに。私の、楽なものに逃げる癖は高校の時についたものだ。

しかし、人生で初めて孤独を味わった高3の頃、「得意科目に集中する」ことに全力を注ぎセンター試験の世界史では93/100点を取り、その高校では成績上位の人しか入れなかったレベルの大学に合格するに至った。

大学では3年から公務員試験に全力で取り組み、国家一般・地方上級の筆記試験に合格。公務員試験がきっかけで法律科目が好きだと気づき、その後は宅地建物取引士の資格にも独学で一発合格する。

しかし、社会人になってからも、興味があるものには短期的に凄まじい力を発揮するものの、自分の興味のある仕事ができなくなったと思えば転職を繰り返すことに。

元々は楽天家で自己肯定感の高かった私だが、20代後半で味わった投資詐欺や転職癖により、すっかり自信を喪失。昨年にはADHDの診断も受ける


妻の話

妻は運動神経は人並みだが、学力は明らかに私より上だ。

某県の偏差値No.1高校に合格し、大学の頃はTOEICでも930点以上のスコアを叩き出している(なお、元々「英語が得意科目」だと息巻いていた私は550点ほどのスコアであり、高校の偏差値では妻と10もの差がある)。

当時は某難関国立大を目指し、勉強に明け暮れていた妻だったが、結局、私と全く同じレベルの大学に進学することになった。
一般的には難関大学なのだが、県内偏差値No.1の高校であれば、恐らく学年の中~下位の学生が進学するレベルであろう。

その後、妻は就活でも大企業を中心に50社以上を受けるが全て落ち、私が1社目に就職した規模の中堅メーカーに就職し、今年8年目を迎える。

1年目には直属の上司からパワハラも受けており、この時ADHDの診断も受けているが、異動や休職もせずにこの苦難を乗り越え、得意な英語を活かし、今では海外営業部で活き活きと働いている。

「もっと良い会社に転職できるのでは?」と私が聞くと、「もう就職活動はしたくないから」と妻は言うが、妻は自分の特性や性格なども理解した上で、通勤しやすい立地や、フレックスや在宅のできる社風を選び、それこそ、一定のペースを保ちながら、無理なく走り(働き)続けている。

自己理解の面でも、妻は私より優れていると思う。


4.走法を変える必要はなく、強みを活かせば良い

人生においても、妻は隣を一緒に走ってくれるランナーであり、パートナーである。

学業や仕事において、私は「短距離ランナー」だ。

1社目では飽き性の私が6年働くことができたが、その要因はといえば、自分の目的を達成するためだ。

会社の経費を使って30県以上に出張し、そういった背景もあって短期的に爆発的な行動力を発揮し、20代で47都道府県制覇を達成した。

ライティングにおいても「半年・独学で15万円」の月収を達成しているが、こちらも興味あるがゆえの短期的爆発力によるものであり、長距離ランナーの妻には難しいと思っている。

そしてさらに、20代で1,000万円の資産を作ろうと息巻いた私は、27歳当時の貯金700万円の大半を投資詐欺に注ぎ込み、転職にも失敗。
一気に人生の階段を転げ落ちることになった。


反対に、妻は「長距離ランナー」である。

大学受験や就活など苦労した経験の中で自分と向き合い、自分の性格や特性を見極め、それを活かせる環境に身を置き、無理のないペースで働いている。

仕事においても1年目から毎月3万円の財形貯蓄を継続し、今ではさらに月12万円の家賃を払いながら、新NISAで毎月10万円を投資する余裕もあり、着実に資産を増やしている。


ここまで見ると、長距離ランナーの方が優れていると思ってしまうが、重要なことは、生まれながらにして「短距離ランナー」の私が「長距離ランナー」に転向する必要はなく、強みを活かせば良いということである。

日本では「長距離ランナー」の方が称賛される傾向にあるが、そんなことは気にせず、今後も「短距離ランナー」として、胸を張って生きれば良いのだ。

妻はそれなりに稼いでいることもあり、一時は得意な家事やライティングをしながら妻を支える「専業主夫ライター」としての道も考えたが、妻からの要望は「定職に就いて欲しい」ということであった。


私はこれからも妻と一緒にいたい。
ゆえに、妻の要望には応えたい。


そのため、私はADHDで手帳を取り、得意な仕事に集中できる障害者枠で大手企業に再就職し、今後は共通の趣味でもある海外旅行にも行きたい、と思うようになった。


ロッキーとエイドリアンのように、私と妻もお互いの苦手な面を補い、時に励まし、時に支えながら、これからも共に生きていきたい。

いいなと思ったら応援しよう!