尽くすタイプ。
いつも読んでくださる方はご存知かもしれないが、私は三姉妹の末っ子である。
実家に、1番上の姉が帰省して、せっかくなので三女を連れて私も帰省した。
あ。
私は毎日、実家の隣の工房で働いているので帰省とは言わないか。まぁいいか。
1番上の姉は、私とは6歳の年の差があって、私が小一の頃、姉は中一だった。
私が高一の頃、姉は会社員でマイカー通勤で
私の高校と姉の会社は同じ市にあり、朝は、姉の運転する車で送ってもらっていた。
そうでなければ、30分バス(510円)に乗り、12分電車(230円)に乗って、15分歩いて行くのだけれど。
姉は当時、事務機器の営業をしていて、男社会の中、かなりストレスフルで、日々殺気立っていた。朝の通勤時にはそれが顕著であり、私が助手席で英語の単語帳を広げ、小テストの勉強をしながらいると、
「柊ちゃん、タバコッ。」
と、カバンからタバコを出させ、渡すと、運転しながらブーンと窓を開けて、ため息なのか煙なのかを「はぁ…」と吐いていた。
嫌な会議があるのだとか、イヤミな取引先のオッサンがいるのだとか、たまにウプッとかなりながら。単語帳を必死に見る私に、
「柊ちゃん、世の中にはさ、
勉強より大切なことがあるんだよ…」
とか何とか浴びせながら。
昔から、私は、姉には逆らえない。
母よりも厳しく、母よりも私をよく見ていて、何となく隠し事ができないような、下手すればサクッと叱られそうな気がする。
共働きの両親の居ぬ間に、親代わりのような存在で、頼りがいがあるだけに、一言一言がズシンとくる。心配していることはわかるのだけれど、とにかく口調がキツい。
そして、人使いがすこぶる荒い。
私はさながら、従順なイヌのように、
言うことを聞いてしまうのだ。
「柊ちゃん、あれとって」
「柊ちゃん、これ捨ててきて」
「柊ちゃん、腰が痛い(マッサージして)」
今だなお。
そして、今、
私のイヌ友達がここにいる。
姉の娘だ。19歳になった次女。
春から公務員になった私の姪っ子。
「ねー柊ちゃん、
ママ、まじで人使い荒いんだけど」
ね、うん、知ってる。
わかる、わかるよ。
自分の方が近くにいるのに、
あれ取ってって言うし。持ってきてとか。
持ってってとか言うしね。
「ホント、マジ人使い荒すぎー」
まあ、私ほどになれば、次に何がいるかとか、あれが欲しいんやろなとかわかるけど。
スっスっと出せるし。先を読むしね。
なんなら、足がダルいとか、腰が痛いとかのマッサージとかもさ、ここをこうだよ。
「あ〜、いいね。そこそこ。」
ね。こうだよ、ぐーっとさ、ね。
このへんをさ、ここで押してさ。
ここが硬いからこうやってほぐしてさ。
「あ、そっかぁ。
ねね、柊ちゃん、私にもやってよ」
おうおう。いいよ。
だからさ、こうしてね、あーここ硬いやん、だからさ、こうね。
「あ〜、いいね。そこそこ。」
ね、いいでしょ〜。
だてに末っ子やってきてないからさ。
こういうとことか、ほら、グィーッと。
「あー、気持ちいい。柊ちゃん上手いね」
でしょ〜。でさ、ここもさ~。
こうやって、やるとさ、気持ちいいんだよ。
「あー、めちゃ気持ちいー」
でしょー。
───って、おい。
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