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京都へ行こう。〈弐〉
朝食は朝の8時だというのに、もそもそと起き出したのは7時過ぎで。のそのそ着替え、洗面台が娘たちで混み合い、荷造りを整えている間、早めに起きて天気予報と睨めっこしていた夫がとうとう
「やっぱり、今日帰るか…」と言う。
台風の進路はどんどん迫ってくるようで、新幹線も飛行機も計画運休だという。高速道路もきっと影響が出てくるはずだ。不気味なトグロがのっそりと近づいて来る。
もう一泊する予定だったけれど、大きな台風を前に、今日のうちに帰る決断をする。
(娘たちは大層残念がったけれど…)
「そうと決まれば、帰るまで楽しもう!」
無事に帰ってこその旅行だもの。
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日本人の方が少ない
予約していたトロッコ列車の嵯峨駅へ向かう。嵯峨駅~亀岡駅、亀岡駅~嵐山駅、峡谷の線路をキィーキィー、ガットンゴットンと進む。下を流れる保津川の、ラフティングボートに手を振って。
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嵐山駅で降りると、大きな蓮の花。
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竹林を抜けて、渡月橋まで歩く。
さすがに人気の嵐山で、とかく外国人観光客が多く、外国の匂いと飛び交う異国の言葉に脳が混乱するほど。
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もう耳から半ば英語脳で、「すみません」ではなく「Excuse me.」と言いながら通りぬける。留学から帰った私や荷物の匂いを、姉たちが「うわっ、外人の匂い」と眉をひそめた、あの匂いを思い出しながら、足早に。
途中、人力車に着物の素敵なお二人さんが乗って、よく日に焼けた筋肉質で爽やかな俥夫が、軽やかに竹林の間を抜けていく。
渡月橋までの目抜き通りで、お団子やお蕎麦をいただきながら。
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保津川から桂川へ。大きな川を渡る。
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キラッキラッと光る小さな魚と、水鳥が潜ったり、水面を走るように飛び立って。
穏やかな顔をした川も、これから来る台風には激しくなるのだという。風が強く吹いた。
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通り沿いのお土産物屋さんで、金彩のアクセサリーや、手ぬぐいや風呂敷や、金平糖を見てまわる。私が絵付している箸置きも、並んでいたりして、嬉しくなった。すれ違う浴衣姿や、折り鶴飾りや風車やに、和の風情を味わいながら。
トロッコ嵯峨駅まで歩き、帰りに伏見稲荷大社へ寄ってから帰ることにしたけれど、あと15分で閉園という(台風へ備え)ギリギリで。
千本鳥居だけを小雨に降られながら、どうにかくぐり、大きなお狐様に見下ろされながらそそくさと後にした。
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サーッと雨が降り出した。
「さぁて、帰るか。」
台風の来ぬうちに。
ペットホテルで初めてのお泊まりをしている猫も、一晩早く迎えにいこう。
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明日は、みんなでゆっくりしよう。
不気味な巨大なトグロが過ぎるまで。
「またおいでやす」
そうしよう。
今度はまた、違う季節に。