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私が尊敬している人の話。


私には、長年尊敬している人が何人かいる。
その一人「スミちゃん」について、今宵は語らせていただきたい。

スミちゃんと出会ったのは、かれこれ21年前。

長女を妊娠し、初めてのことに右往左往し、市の「妊婦学級」に参加した際、挨拶もひときわ爽やかで、一目見て「この人おもしろそう!」と、明るいオーラを感じ近づいて、自己紹介やら交流会ののち、彼女を含む5人くらいのグループができた。


年齢的には私は一番年下で、他の4人は同じか1つ2つ違うくらいのグループ。私より4つ5つ年上な方ばかりだったけれど、なにせ私は、三姉妹の末っ子で育ったおかげで、なんら気負わず、姉たちといるくらい自然に、かなり居心地よく馴染むことができていた。みんな気さくで楽しい人ばかりだったのが、本当に恵まれていたと思う。

そんな妊婦学級では、夫婦二人の生活から、赤ちゃんのいる生活に変わるという長子の妊娠期、いろんな悩み交流やアドバイスをいただいていた。

「子どもが産まれたら、外食はしばらくできなくなるから、いまのうちに行っておいで。」

それは当時の私たちには、なんだかとてもリアルで切実な問題に思えた。しっかり働いていた人達も、妊娠後期になれば仕事をやめ、あるいは育休に入り、とたんに時間ができて。けれども今まで一緒にごはんしていた友達は、仕事中だったり予定が合わず、気軽に誘うこともできず、かといって飲みに行くこともできなくなる。

そんな時期に同じ妊婦で、週数も近い人とのつながりというのは、とても心強く感じた。

「モーニングいかない?」
「ランチしない?」

妊婦学級で出会って、同じような悩みを抱えるもの同士そんなグループのプライベートなごはんでいろんな情報交換ができたことは、その後の私の育児にも、とても大きな支えだったと思う。


そんなふうに出会ったスミちゃん。
けれども彼女は、わが子たち三姉妹には、よりかかせない存在になっていったのである。

と、いうのもスミちゃんは、とあるスポーツクラブ施設のインストラクターを長年つとめていて、妊娠を機に育休をとったのだけれども。
長女たちがいよいよ保育園へあがるころ、エアロビクス講師だった彼女の得意分野を活かし、ぜひとも、ちびっ子向けのリトミックや体操教室みたいなのをしてよ!とお願いしたのだ。

それから、彼女は本当に立ち上げてくれた。
もちろん私たちも出来る限りのサポートをしながら、町内の公民館講座の「キッズエアロ教室」に長女も参加させてもらった以来、反響を得て「キッズチアダンスクラブ」発足となり、やがては、発足当初は年長だった長女が中学を卒業する10年間ずっとお世話になることになった。

それどころか、わが家においては、妹たちも加入し、次女も年長さんから中学卒業まで、三女もしかりで、私としてみたら通算15年ほど、彼女にはお世話になっていることになる。

その間、三姉妹にはいろいろなことがあったのだけれど、週に一度のチアのレッスンへ行くことは私が母として「これがあれば大丈夫」と思うほど、子育ての指針としてきたところがあった。

それは、私が体育教師を目指した経験が大きいのだと思う。挫折して夢叶わずだったけれど、体育が好きなのはかわりなく、わが子たちには「身体を動かす喜びや楽しさ、体幹や柔軟性やリズム感の大切さ」を学んでいてほしかった。それさえ心得ていれば、この先どのスポーツをするにしても必ず活きてくる基盤となるからだ。それは、小さなうちほど身につけておくと良い。

スミちゃんは、その願いを叶えてくれる大きな柱となる存在でいてくれたのだった。

挨拶や整列、姿勢に関しても、彼女は年長さんから丁寧に教えてくれていた。

ピシッと立つよー
元気な声で!
はい、まっすぐ並ぶよー

根気よく、時には厳しく、自分の声を枯らしながら指導してくれていた。

学校の体育ではさらっとしかしてもらえないような柔軟体操のポイントや、指先までそろえる姿勢の美しさまでを、週に一度の一時間のレッスンを重ねることで身につけさせてくれた。

その基本のストレッチのおかげで、いまだに、わが子たちは身体が柔らかく、本格的なスポーツをしはじめても、故障や怪我に悩まされることなく過ごせてきている。

そして、夏祭りや文化祭、各種イベントでたくさんの観客の前で踊ってきた経験から、人前にたつ度胸が自然と身についていた。

これは後々、娘たちのとても大きな武器となってきて、学校生活においても、委員長や生徒会など、中心になって動き人前に出る機会の多い仕事へも物怖じせず挑める勇気になっていっていたのだった。

スミちゃん、様々だ!!

そんなスミちゃん率いる「キッズチアダンスチーム」は、いまや年長~中三まで5チーム100人超えの大所帯となっている。卒業生たちは、高校のダンス部やチアリーディング部へ進んだ子たちも出てきて、いろんなお祭りやイベントへもお呼びがかかるほど、活躍し続けているのだ。

スミちゃん、すごっ!!

各チームの振り付けや、レッスン運営、イベント参加の引率など、一人何役もこなすスーパーウーマンとは彼女のことだ。

私よりも小さな彼女の身体からの、これほどまでの大所帯を取り仕切り、長年続けているバイタリティーや信念を、私は心から尊敬している。

「柊ちゃーん、もう私しんどいわー!」

と泣き言をいいながらも、しっかりと面倒みてしまう彼女を、たまにはほんのり支えながら。


今年いっぱいでついに三女が中学を卒業する。
長らくお世話になったチアダンス生活から、私も卒業することになる。

そう思うと、イベントごとの、ひとつひとつのステージにうるうるきちゃってしかたない。

最後のステージのあとには、私は、スミちゃんにちゃんと伝えたいと思っているけれど、そのときまでにはこの思いを、きちんと言葉にしていく必要があるなぁ、と思っているけれど。



本当は言葉ではなく、

泣きながらギューっと抱きつく以外、
方法がない気がしてしょうがない…。







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