部屋はその主に似て。
一階の北側の部屋は、夫婦の寝室なのだけれど、その、ほぼ半分を「私の部屋」にしてしまっている。じわじわと。
夫は特に、自分のスペースを求めていないし(ゆっくりテレビの前でゴロンとしていたい)今時期なら、こたつとリモコンがあれば、ゆっくりまったりしていられる人なのだ。
私は、引き出しのある机が欲しくて。
大きな本棚も欲しくて。
金魚とメダカを飼いたくて。
壁に好きな物を貼り付けたくて。
絵を描いたり、粘土をしたり、本を読んだり。展示会や美術展へ行けば、ポストカードを買ってきてしまうから、飾っておきたくてようやく重い腰をあげて、掃除をした。
机の引き出しも、つっかえて開かないくらいになってたから、整理をして。
スッキリと、好きな物に囲まれてたい。
玄関にあった、古いCDコンポ(CDもMDもカセットテープも対応)と、たくさんのCDやMDも整理して(厳選して処分した)、部屋の戸棚へ引越した。カセットテープはさすがに、一本あっただけだった。
CD-Rに落として曲目を書いた手書きの文字に、手が止まる。ミニーマウスのメモ紙。
好きだった人からのものだった。
「仕事に追われて疲れている柊へ」
と、郵便受けに届けてくれたのは、何年も前の、ちょうど今ごろだった。
そっと、戸棚にしまった。
いつか、懐かしく、心穏やかに聴ける日がくる。今はまだ。だって、手書きの文字を見ただけで(不意打ちだった)こんなにも動揺してしまうのだから。整った文字に、彼女の指先を思い出す。丁寧にお礼状を書いている姿を。
好きな物と、大切な物と。
ごちゃごちゃしているのも好きだけれど、
明確に好きな物を飾っておくと、
大切な物をしまっておくと、
自分の輪郭がくっきりとしていくみたいだ。
これがきっと
等身大の、今の私なんだと思う。