治療システムを観察するための思案

はじめに
 システムズアプローチで治療システムをメタ・ポジションから観察するためにどうすればよいかを以下に思案として提示してみます。

①ThとCl・家族の非言語の相互作用を考えてみる。
 例えば、システムズアプローチやSFAなどの研修で行う音声カットでロールプレイを行う ワークのように、言語的な意味を離れて動作や間合いと順番、表情やテンポとトーンがどの ように繋がっているのか、結果どうなるのかまで観察してみる。

②コンテクストAの時の、コンテクストBの時の、ThとCl・家族の相互作用・パターンはと 機能で考えてみる。
 話題Aの時の、話題Bの時の...と状況設定ごとに何が起きているのか考えてみる。例えば、面 接開始時のコンテクストの相互作用は?ThからClへ質問をする時のコンテクストの相互作用 は?問題の話題の相互作用は?問題外の相互作用は?などと区切って観察してみる。

③ThのCl・家族に対する相互作用を左右・上下の位置という構造で考えてみる。
 ポジションの上下、アップポジションか、ダウンポジションか、その流動生は?ポジション の左右、家族の誰と繋がりやすいか、誰と繋がりにくいか、その流動性は?家族システムの 中でThがどのような位置にいるのか観察してみる。

④時間経過とともに、治療システムがどのように変化しているのか発達で考えてみる。
 ジョインニング過程、情報収集の過程、下地作り過程、介入過程など、時間経過ごとに治療システムで
どのような状況設定、やりとりが行われてきたか観察してみる。

⑤ThとCl・家族の相互作用をコンテクストとコンテンツの関係で考えてみる。
 各メンバーがどのような文脈(コンテクスト)で、語っているのか、また面接全体で形成されている文 脈、もしくは語られていない文脈はどこか観察してみる。そして、会話の内容(コンテンツ)を要求⇆ 反応枠で観察してみる。

⑥ThとCl・家族の相互作用が行き詰まった時に、治療システムのホメオスタシスとしてどのようなこと が起こるのか考えてみる。
 回避、逸らし、無視、沈黙...スケープゴート、手を出す人、手を引く人、中立、観察者、暗黙のルール は?など、治療システムが行き詰まった時に起こる事と、それに対するThの反応を観察してみる。

⑦心のビデオカメラで治療システムを俯瞰し、Th自身を治療システムの一要素としてどのように振る舞 えばよいのか考えてみる。
 世阿弥の言う「離見の見」、「見所同心」であり、治療システムを客席から離れてみるような「目前心後」の姿勢で俯瞰する。森俊夫先生の「ブリーフセラピーにおける演劇の活用」でいう脚本家の視点で治療システムを観察し、演出の仕方を考えてみる。

具体的な訓練方法
 ①逐語録と事例化を繰り返する。
 ②面接を録画して相互作用を観察する。
 ③SVやGSVを受ける。
 ④学会や症例検討に参加する。
 ⑤人前でロールプレイを見せて解説する。

おわりに
 
簡単ですが以上が、治療システムを観察するための思案になります。

参考文献
森俊夫(1994)ブリーフセラピーにおける演劇の活用,ブリーフセラピー入門,金剛出版.

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