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投資手法あれこれ

はじめに

私は現在専業投資家として生計をたてています。投資スタイルは、株のシステムトレード/クオンツモデル運用です。本記事では、過去に開発したが運用停止に至ったものを供養のために共有します。

開発モデルその1:バリューファクターモデル

最初に開発したのはPERのバリューファクターモデルです。あるセクターにおいて、PERが高い順に並べて割高な上位銘柄を空売りして割安な下位銘柄を買うモデルです。セクター分類は、日経NEEDSやTOPIXの業種分類を利用しました。最上位と最下位ははずれ値として除いて上位4銘柄と下位4銘柄を売買対象にし、リバランスは月次で実施します。こんな単純なモデルでもそこそこの損益グラフ(下記)になりました。

バリューファクターモデルの損益グラフ

ここからさらに流動性を加味したりして改良していざ運用開始しました。しかし運用開始直後からドローダウンに見舞われました。原因はPERの高い小型成長株が決算後に暴騰したことなどです。それに業種を5業種に限定したのですがオーバーフィットの懸念がありました。運用開始直後から想定外のドローダウン食らうと一気に不信感が募ります。我慢が足りない気もしますがこのモデルは2ヶ月で早々に運用停止しました。

開発モデルその2:ペアトレード

次に開発したのはペアトレードで運用するモデルです。同業種で似た株価の動きをする2銘柄を抽出し、直近株価が上がった銘柄を空売りし、株価が相対的に下がった銘柄を買います。いわゆる広い意味でのサヤ取りとも呼ばれる手法です。ペアにする銘柄は、共和分検定や相関係数、サヤチャートの目視などによって選定しました。損益グラフ(下記)はそこそこいいものが出ました。

抽出ペアによるペアトレード損益グラフ

これも流動性など加味して改良して運用を開始しました。あるあるなのですが、運用開始直後から損益グラフが横ばいになりました笑。そもそもペアを抽出した段階でオーバーフィットの可能性もあるので全ペアで損益グラフも見てみました(下記)。

全ペアでのペアトレード損益グラフ

ドローダウンの期間、大きさからとても運用に耐えられそうにないです。ペア抽出に優位性がないと運用できないでしょう。ペア抽出を検討するため一旦このペアトレードは運用停止しました。フォワードテストなどオーバーフィットの可能性を少しでも排除するよう検討しました。運用停止直後から損益グラフがぐんぐん右肩上がりになりました笑。なんやかんやと改良して6ヶ月後に運用再開しました。再開直後から損益グラフは横ばいに戻りました笑。心が折れて運用停止しました。
ペアトレードに関しては有名なクオンツトレーダーであるUKIさんも検証されていますが、結果はいまいちです。へなちょこクオンツトレーダーである私には無理と判断し断念しました。

開発モデルその3:マクロ指標モデル

UKIさんの記事でセクターアロケーションとして紹介されているモデルを参考に開発しました。セクターの上げ下げを為替や株式指数などのマクロ指標をもとに予測するモデルです。色々改良しながら最終的にそこそこの損益グラフ(下記)のモデルができました。

マクロ指標モデルの損益グラフ

このモデルを運用開始してから半年ぐらいは頑張りました。しかしながら損益が当初想定よりもボラが大きく、リターンが小さい状態が続きました。このモデルは毎朝マクロ指標の数値データをWebブラウザ経由で自動取得しなければならないのですがデータ取得先のサイトのHTML構造の変化などあって運用が面倒でした。面倒さと低リターンなことから運用停止しました。運用停止後も損益がどうなっているか監視しているのですがプラスは継続しているので使えないモデルというわけでもなさそうです。

開発モデルその4:PEADシステム

PEAD(Post Earnings Announcement Drift)と呼ばれるアノマリーを利用したシステムです。PEADは、好業績が発表されると一定期間上昇トレンドが維持されやすいというアノマリーで、古くから世界中で観測されている現象です。2023年11月にSMBC日興証券からクオンツレポートが出ていましてそれを参考に開発しました。ユニバースはTOPIX100とし、決算発表直後の売買代金がそれ以前の2倍以上に膨らんで上昇した銘柄を翌営業日に仕掛けて25営業日後に決済するという単純なものです。損益グラフ(下記)は微妙ではあるものの、2024年は年初から大型株相場であり、手持ちに大型株対象のシステムがなかったので補強の意味で運用することにしました。

PEADシステムの損益グラフ

結果は微妙でした。2024年前半は大型株というより半導体製造装置株がメインでしたので仕方ないのですが、パフォーマンスは日経平均指数に劣後する状態でした。

まとめ

今回紹介したどのモデル/システムも年率10%から15%ぐらいなら稼げるのではないかと思っていますが私には長期運用に耐えられませんでした。今のように世界的に地合いがいいときは普通に長期投資しているほうが圧倒的に儲かるためです。いつかまたこれらのモデルを引っ張り出して運用再開するかもしれません。古くからあるアノマリーはリターンは小さいものの、時の試練に耐えている分、工夫次第でまだまだ使えると思っています。


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