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母の行商
不意にみたNETの写真で
外国の方が浅草へ行った
思い出写真のなかに
片足だけの草履
お土産のい草の
あかい鼻緒に値札は
¥4、400
片方だけなら半分か
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129313775/picture_pc_f8b999de4926a73f83019acbba18d1f4.png?width=1200)
おもいだしたこと母の行商
田舎の靴屋で
革靴など売れもしないこと
わかっていたはず
誰の入れ知恵だったのか
閑古鳥のお店をたたんで
とうとう唐草の大風呂敷に
下駄や草履や足袋や鼻緒
それらの修理金具紐
千枚通し大小
麦ご飯に梅干しだけの
アルマイトの弁当箱
ぜんぶ包み込んで
僕を連れて山路を歩いた
それで心臓を痛めたがね
坂道ばかり
やすみやすみ
足手まといの僕を
けして叱らなかったね
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129313891/picture_pc_f8b37fc3e25ad10eedf79d38629b21ba.jpg?width=1200)
ときどき小さな台帳に
なにか書き留めてたね
汗をふきふき
かがやいた顔で
あれが俳句だったって
解ったのは
天に召されるまえのとこで
笑いながら
教えてくれたんだよね
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129314049/picture_pc_aa750e9a7dcbd31d52f66f5e4d5b8888.jpg?width=1200)
やっとの思いで辿り着いた山の上のお家で
あるだけのすり減った
履き物を出してくださって
夢中で鼻緒をいわって
(すげ替えること)
嬉しかったね
昼のお惣菜までよばれて
あのときの母の姿
どれほど可愛かったか
忘れることはない
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129314118/picture_pc_e8ff62f34383b1ba9272427cd4f7cf91.jpg?width=1200)